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【ゼネコン現場監督が徹底解説】固定支保工式架設工法による橋梁施工の概要

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  • 橋梁上部工の現場に配属になったんだけど…
  • 橋梁施工は未経験だからイメージがつかめない
  • 固定支保工式架設工法による橋梁施工について具体的に教えて!

土木施工管理の仕事をしていると、未経験の工種の現場監督になることがあります。特に若手の間は、工程がなかなか覚えられずに苦労する方も多いです。

私がゼネコンに入社して最初に担当した工事は、固定支保工式架設工法によるPC橋梁の施工でした。固定支保工式架設工法がどのような施工方法なのか分からず、頭を抱える毎日。何度も失敗を繰り返し、たくさんの遠回りをしながら仕事を覚えました。

そこでこの記事では、橋梁工事未経験者でも迷わずに施工管理業務ができるように、固定支保工式架設工法による橋梁施工を分かりやすく解説します。この記事を読めば、「固定支保工式架設工法がどのような施工方法なのか」が分かります。

私がPC橋梁施工の現場監督として培ってきた経験をまとめました。橋梁づくりについて詳しく知りたい方は最後まで読んでください。

目次

固定支保工式架設工法とは

固定支保工式架設工法とは、橋梁の場所打ち架設工法の一種です。コンクリート道路橋施工便覧では、下記のように説明されています。

固定支保工式架設工法とは

固定支保工式架設工法は、移動支保工式架設工法と対比した架設工法の名称で、簡略に定義を述べると、支保工を地盤上に直接設置する方法によるか、既設の構造物上に支保工又ははりを直接固定して設置する方法によって、組み立てられた支保工を用いて架設する工法である。

コンクリート道路橋施工便覧  公益社団法人 日本道路協会
ツッキー

場所打ち架設工法とは、橋梁を架設するその場所に、コンクリートを打ち込む工法のことです。固定支保工式架設の他には、移動支保工式架設や張出架設があります。

固定支保工式架設工法の分類

固定支保工式架設工法は、支保工として使用する部材の組み合わせによって、以下の分類があります。

  • クサビ結合式支保工架設
  • はり式支保工架設
  • はり・支柱式支保工架設
ツッキー

私はクサビ結合式支保工架設による橋梁施工を経験しました。
よって、本記事ではクサビ結合式支保工架設を中心に解説します。

クサビ結合式支保工架設工法の概要

クサビ結合式支保工架設工法は、支柱材と水平方向補強材により構成された支保工です。支保工基礎部にはベースを、頂部には型枠受け梁を支持するための大引き受ジャッキを配置して、高さの調整を行います。支保工基礎は、敷き均した砕石の上に鋼矢板を敷設するのが一般的です。

支保工基礎工の施工管理については、下記の記事で解説しています。

採用条件

クサビ結合式支保工架設工法は、以下の条件のもとで採用されます。

  • 桁下空間に障害物がないこと
  • 桁下の高さが低いこと
  • 基礎地盤が良好かつ水平であること
  • 橋の形状が複雑であること

桁下空間に障害物がない

桁下空間に障害物がある場合、鉛直方向や水平方向の荷重に対して安全な支保工を組み上げることはできません。もちろん、河川や道路が桁下を通っている場合も、基礎地盤を確保できないので採用不可能です。

桁下の高さが低い

桁下の高さが高いと、その分支保工を組む量が増えてしまいます。桁下全てに支保工を組み上げるクサビ結合式支保工だと、経済的ではありません。

基礎地盤が良好かつ水平である

また、基礎地盤が良好かつ水平であることが求められます。地盤の反力によって支保工は支えられているからです。支保工基礎工では、地盤を水平に均す作業を行う必要があります。

橋の形状が複雑

橋の形状が直線形の場合は、張出架設工法などの他の工法でも架設することができます。しかし、曲線や拡幅のある形状の場合は、クサビ式結合式架設工法が採用されやすいです。

ツッキー

私が施工した橋梁は、橋台付近に拡幅部がある構造で、かつ桁下の高さが低いという条件でした。
そのため、橋台付近はクサビ結合式支保工で、それ以外の区間は張出架設で施工を行いました。

施工手順

クサビ結合式支保工の施工手順は下記の通りです。

  • 不陸整正
  • 地盤砕石補強
  • 河砂充填
  • 鋼矢板敷設
  • 支保工組立

不陸整正

不陸整正とは、凹凸のある箇所を平らにする作業のことを指します。固定支保工式の場合、基礎地盤が平らであることが望ましいです。よって、バックホウにて型枠支保工設置箇所の表土をすき取って、平坦に敷きならします。敷きならす際は、バックホウのバケットですき取った表土を押し固めます。

砕石敷均し

すき取って押し固めた表土の上に砕石を敷き、コンバインドローラーにて転圧を行います。型枠支保工を地盤の反力によって支えるために、地盤を補強することが目的です。

河砂充填

砕石の敷均しによってできた隙間に河砂などを充填することによって、地耐力を強化します。

鋼矢板敷設

支保工基礎工では、敷きならした砕石上に鋼矢板を設置する方法が一般的です。支柱列に沿って鋼矢板の設置を行います。

支保工組立

鋼矢板上に支保工を組み立てます。組立手順は、下記のとおりです。

  • 敷板の設置
  • ベースジャッキ・調整用カラー材の設置
  • ベースジャッキを敷板に釘打ち固定
  • 水平つなぎ材(根がらみ)の取り付け
  • 支柱材・水平つなぎ材・ブレース材の取り付け
  • 手すり・足場板・巾木・昇降足場の取り付け
  • 所定の高さまで❺と❻の繰り返し
  • 大引き受けジャッキ取り付け
  • 大引き材・根太材の取り付け
  • 高さ調整
ツッキー

釘打ち固定と根がらみの取り付けは安衛則242条で定められています。

留意事項

クサビ結合式支保工架設工法では、以下の項目に注意しましょう。

  • コンクリート打込み時の荷重に対する支柱やブレース材の安全性やたわみを検討する
  • コンクリート打ち込み中に、沈下量を検査する
  • 地盤の載荷試験を行い、支持力を把握する
  • 支保工材は、橋脚、橋台などに固定して、水平方向荷重に対する安定性を検討する
  • 支保工の撤去方法を検討する

支柱やブレース材の安全性やたわみを検討

支保工の図面を作成する時点で、必ず支柱やブレース材の安全性やたわみを検討しましょう。その際は、最大荷重となるコンクリート打込み時の荷重で計算を行います。支柱の高さが3.5m以上の型枠支保工を組み立てる場合は、事前にその計画内容を所轄労働基準監督署長に届け出ることを労働安全衛生法第88条で義務づけられています。安全性やたわみの計算書を作成したら、88条申請の際に合わせて提出することが必要です。

コンクリート打設中の沈下量検査

コンクリート打込み荷重によって、地盤が沈下していないかどうかを検査する必要があります。あらかじめ、支柱にレベルをマーキングしておき、コンクリート打設状況に合わせてレベルが変化していないかを確認します。

平板載荷試験の実施

平板載荷試験を実施して、地耐力を求める必要があります。地盤の反力によって、支保工にかかる荷重を受けるからです。地盤の強度が不足している場合は、補強方法を検討しなければいけません。

水平方向荷重の安定性を検討

型枠支保工は、鉛直方向荷重の5%に相当する水平荷重が作用しても安全な構造である必要があります。橋脚や橋台などに水平繋ぎを設けることによって、水平方向荷重に対する安定性を検討しましょう。

ツッキー

安衛則240条によって、水平方向荷重の検討は決められています。
水平方向荷重は、鉛直方向荷重に対する比率で求めます。鋼管枠の場合は2.5%、それ以外の支保工は5%です。

支保工撤去方法の検討

支保工の撤去方法についても、組立前に検討しておく必要があります。撤去する際は構造物が完成しているので、組立時よりも条件が悪くなるからです。

はり式支保工架設工法の概要

はり式支保工架設工法は、橋脚に取り付けたブラケットや、橋脚に沿わせてフーチングや基礎から立て込んだ支柱などを使用します。ブラケットや支柱で支えられたはりにより荷重を受ける支保工です。はりには大型組立てばりや、架設桁が使用されます。はり上にクサビ結合式支保工を使用した併用式が採用されることも多いです。

採用条件

はり式支保工架設工法は、以下の条件のもとで採用されます。

  • 桁下空間を十分に確保する必要があること
  • 桁下の高さが比較的高いこと
  • 基礎地盤が軟弱であること
  • クレーン等が侵入できること

施工手順

はり式支保工の施工手順は下記の通りです。

  • 橋脚ブラケット取付
  • ブラケット上で受ばりの固定
  • はり材を支柱間に載せる
  • 水平つなぎやブレースではり材を固定
  • ジャッキで高さ調整

留意事項

はり式支保工架設工法では、以下の項目に注意しましょう。

  • コンクリート打込み時の荷重に対するはり材の安全性やたわみを検討する
  • ブラケット取り付け部の橋脚の安全性を検討する
  • 架設荷重に対する構造安全性を検討する
  • はり材の組立て、撤去方法を検討する

はり・支柱式支保工架設工法の概要

はり・支柱式支保工架設工法は、桁下空間が河川や道路などで開口部が必要な場合に採用されます。はり材を通じてはり支点の支柱で荷重を集中的に受ける構造です。支保工ばり、支柱材、及びはり受けブラケット、クサビ結合式支保工によって構成されます。

採用条件

はり・支柱式支保工架設工法は、以下の条件のもとで採用されます。

  • 桁下空間を一部確保する必要があること
  • 桁下の高さが比較的高いこと
  • 支保工を支持する部分の基礎地盤が良好であること
  • 桁下の地盤が一部悪いこと
  • 支間が長くてはり式支保工を採用できないこと

施工手順

はり・支柱式支保工の施工手順は下記の通りです。

  • 地耐力の確認
  • 杭・基礎コンクリートで地盤補強
  • 鋼製組立て支柱、H鋼などで支柱組立
  • はり材を支柱間に載せる
  • 水平つなぎやブレース材ではり材を固定
  • ジャッキで高さ調整

留意事項

はり・支柱式支保工架設工法では、以下の項目に注意しましょう。

  • コンクリート打込み時の荷重に対するはりの安全性や支柱の座屈を検討する
  • 地盤の不等沈下に対して検討する
  • 支保工の撤去方法を検討する
  • はり材や枕材の支点部に対して座屈補強する

固定支保工式架設工法のまとめ

本記事では、固定支保工式架設工法について徹底解説しました。

固定支保工式架設工法は、支保工形式の一種であり、以下のように定義されます。

固定支保工式架設工法とは

固定支保工式架設工法は、移動支保工式架設工法と対比した架設工法の名称で、簡略に定義を述べると、支保工を地盤上に直接設置する方法によるか、既設の構造物上に支保工又ははりを直接固定して設置する方法によって、組み立てられた支保工を用いて架設する工法である。

コンクリート道路橋施工便覧  公益社団法人 日本道路協会

固定支保工式架設工法は、支保工として使用する部材の組み合わせによって、以下の分類があります。

  • クサビ結合式支保工架設
  • はり式支保工架設
  • はり・支柱式支保工架設

本記事を読んで、橋梁工事未経験者でも、固定支保工式架設工法の概要を知ることができたと思います。ぜひ、施工管理業務に役立ててください。

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この記事を書いた人

ツッキーのアバター ツッキー 土木施工監督

【20代土木施工監督】
橋づくり2年目
土木施工管理の仕事で得た経験と知識を発信

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