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【Excelで誰でも簡単】型枠支保工の強度計算方法について徹底解説

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  • 型枠支保工の計算書を作成しないといけないけど…
  • どうやって計算すればいいか分からない
  • 型枠支保工の強度計算方法を具体的に教えて!

コンクリート構造物を構築する際に使用される型枠支保工。型枠を支えるために仮設の支保工材を組み立てる工事です。ゼネコンに入社してすぐに型枠支保工の強度計算を任されて、悩んでいる若手現場監督も多いはず。

私自身、新卒でゼネコンに入社して半年くらい経った時に、固定支保工架設の橋梁工事の担当者になり、型枠支保工の計算書チェックを経験しました。そもそもどういう手順で型枠支保工の強度計算をしているのかが分からず、手探り状態で確認しました。

そこでこの記事では、未経験者でも迷わずに型枠支保工の強度計算ができるように、型枠支保工の計算手順を分かりやすく解説します。この記事を読めば、「型枠支保工の計算書をミスなく簡単に作成する方法」が分かります。

私が普段どんな手順で型枠支保工の計算を行っているのかをまとめました。型枠支保工の強度計算を効率よくしたい方はぜひ最後まで読んでください。

型枠支保工計算を自動化するExcelを公開中
目次

型枠支保工の強度計算方法

型枠支保工の強度計算は、コンクリート打設に伴う荷重に耐えられるように、各部材の強度を検証するものです。鉛直方向荷重、水平方向荷重、コンクリートの側圧などの荷重条件を考慮して計算を実施します。型枠支保工の強度計算は、以下の2つのパターンについて実施しましょう。

  • 底型枠の検討
  • 側型枠の検討

底型枠の検討

底型枠の検討では、コンクリートの底面に作用する荷重に対して各部材が耐えられるかどうかを計算します。底型枠の強度計算は、以下の手順で行います。

  • 荷重の算出
  • せき板の検討
  • 根太材の検討
  • 大引材の検討
  • 支保工の検討
  • 水平力の検討

荷重の算出

底型枠に作用する鉛直荷重を算出する際に必要な情報は以下の2つです。

  • 荷重の算出方法
  • コンクリートの厚さ

コンクリート荷重の算出方法は、建築・土木・橋梁の3種類に分類されています。それぞれの鉛直荷重の値は以下の通りです。

荷重の種類建築土木橋梁
鉄筋コンクリートの単位荷重23.5kN/m325.0kN/m324.5kN/m3
作業荷重+衝撃荷重1.5kN/m22.5kN/m23.5kN/m2
仮設荷重0.4kN/m20.5kN/m2
分類別鉛直荷重

建築・土木・橋梁の分類については、以下の文献を参考にしています。

  • 建築:日本建築学会「型枠の設計・施工指針案」
  • 土木:土木学会「コンクリート標準示方書[施工編]」
  • 橋梁:(社)プレストレスト・コンクリート建設業協会「施工計画書作成の手引き(場所打ち編)」

平米あたりの荷重計算式は以下の通り。計算式内のtはコンクリート厚さです。

分類計算式
建築    W=23.5kN/m3×t+1.5kN/m2+0.4kN/m2
土木W=25.0kN/m3×t+2.5kN/m2
橋梁W=23.5kN/m3×t+3.5kN/m2+0.5kN/m2
平米あたりの荷重

具体的な計算例は下記の通りです。

  • 荷重の算出方法 : 土木学会「コンクリート標準示方書[施工編]」
  • コンクリートの厚さ:0.3mm
ツッキー

算出したコンクリート単位荷重(kN/m2)を各部材の検討時に使用します。

せき板の検討

せき板の検討を行う際に必要な情報は以下の2つです。

  • せき板の種類(根太材の設置方向)
  • 根太材の設置間隔

せき板の主な使用材料は、合板、メタルフォームなどです。使用材料毎に断面性能が決まっています。また、根太材の設置方向によってせき板の断面性能や荷重負担幅が変わる場合があります。合板を使用する際などは、根太材の設置方向も合わせて確認しましょう。根太材の設置間隔は、計算上梁材の長さに該当します。

日建リース工業(株) 仮設資材カタログ

荷重計算を行う際は、せき板を等分布荷重の単純梁として考えるのが一般的です。以下の式が成立するかどうかを確認してください。

  • 曲げ応力度≤せき板の許容曲げ応力度
  • たわみ≤3mm

具体的な計算例は、下記の通りです。

  • せき板の種類(根太材の設置方向) : 合板12mm幅900mm(繊維に直角に根太設置)
  • 根太材の設置間隔 : 300mm

根太材の検討

根太材の検討を行う際に必要な情報は以下の3つです。

  • 根太材の種類
  • 根太材の設置間隔
  • 大引材の設置間隔

根太材の主な使用材料は、単管、60角鋼管などです。使用材料毎に断面性能が決まっています。根太材の設置間隔が荷重負担幅、大引材の設置間隔が梁材の長さ、にそれぞれ該当します。

荷重検討を行う際は、根太材を等分布荷重の単純梁として考えることが多いです。以下の式が成立するかどうかを確認してください。

  • せん断応力度≤根太材の許容せん断応力度
  • 曲げ応力度≤根太材の許容曲げ応力度
  • たわみ≤3mm

具体的な計算例は、下記の通りです。

  • 根太材の種類 : 角パイプ□-60×60×2.3
  • 根太材の設置間隔 : 300mm
  • 大引材の設置間隔 : 1225mm

大引材の検討

大引材の検討を行う際に必要な情報は以下の4つです。

  • 大引材の種類
  • 荷重モデル
  • 大引材の設置間隔
  • 支柱材の大引材方向の設置間隔(支柱材と端部の離れ)

大引材の主な使用材料は、角鋼管、H鋼などです。使用材料毎に断面性能が決まっています。大引材の荷重検討を行う際は、大引材を単純梁、もしくは片持梁として考えます。単純梁か片持梁かによって値の算出方法が異なるので、荷重モデルを確認しましょう。大引材の設置間隔が荷重負担幅です。支柱材の大引材方向の設置間隔は梁材の長さに該当します。片持梁の場合は、支柱材から部材端部までの長さが梁材の長さです。

荷重モデルに応じた算出方法によって、以下の式が成立するかどうかを確認してください。

  • せん断応力度≤大引材の許容せん断応力度
  • 曲げ応力度≤大引材の許容曲げ応力度
  • たわみ≤3mm

具体的な計算例は、下記の通りです。

  • 大引材の種類 : 角パイプ□-100×100×3.2
  • 荷重モデル : 単純梁
  • 大引材の設置間隔 : 1225mm
  • 支柱材の大引材方向の設置間隔 : 1530mm

支保工の検討

支保工の検討を行う際に必要な情報は以下の3つです。

  • 支保工の種類
  • 大引材の設置間隔
  • 支柱材の大引材方向の設置間隔(+端部との離れ)

支保工の主な使用材料は、建枠やシステムサポートです。支保工によって許容荷重が決まっています。大引材の設置間隔と支柱材の大引材方向の設置間隔は、それぞれ支柱材にかかる荷重を算出するために必要です。検討断面によっては、支柱材と端部との離れの値も使用します。

荷重検討を行う際は、以下の式が成立するかどうかを確認してください。

  • 支柱材にかかる荷重≤許容荷重

具体的な計算例は、下記の通りです。

  • 支保工の種類 : 3Sシステム
  • 大引材の設置間隔(縦断方向間隔) : 1225mm
  • 支柱材の大引方向の設置間隔(横断方向間隔) : 1530mm

水平力の検討

水平力の検討を行う際に必要な情報は以下の6つです。

  • 水平力の算出方法
  • 型枠の勾配
  • ブレースの種類
  • ブレースの配置スパン
  • ブレースの配置高さ
  • ブレースの配置間隔

水平力の検討は、労働安全衛生則第240条第3項に基づき検討を行います。

第240条第3項

(3)鋼管枠を支柱として用いるものであるときは、当該型枠支保工の上端に、設計荷重の100分の2.5に相当する水平方向の荷重が作用しても安全な構造のものとすること。

(4)鋼管枠以外のものを支柱として用いるものであるときは、当該型枠支保工の上端に、設計荷重の100分の5に相当する水平方向の荷重が作用しても安全な構造のものとすること。

鋼管枠とは、枠組支保工のみである。

鋼管枠以外のものとは、枠組支保工以外の支保工である。

労働安全衛生則

上記に基づいた水平力の算出式は以下の通りです。

  • 型枠がほぼ水平で工場製作精度で支保工を組み立てる場合
    照査水平荷重=鉛直荷重×0.025
  • 型枠がほぼ水平で現場合わせで支保工を組み立てる場合
    照査水平荷重=鉛直荷重×0.050
  • 型枠の勾配(tanθ)が前記値を超える場合
    照査水平荷重=鉛直荷重×cosθ×sinθ(3°≤θ≤45°)

ブレースの種類によって許容荷重が異なるので、どのブレースを使用するかを確認してください。また、ブレースの配置スパン、配置高さ、配置間隔は、許容水平耐力を算出するために必要な情報です。

荷重検討を行う際は、以下の式が成立するかどうかを確認してください。

  • 照査水平荷重≤許容水平耐力

具体的な計算例は、下記の通りです。

  • 水平力の算出方法 : 建枠以外
  • 型枠の勾配 : 0°
  • ブレースの種類 : 3Sシステム(φ48.6)
  • ブレースの配置スパン : 1225mm
  • ブレースの配置高さ : 1800mm
  • ブレースの配置間隔 : 4本

側型枠の検討

側型枠の検討では、コンクリートの側面に作用する荷重に対して各部材が耐えられるかどうかを計算します。側型枠の強度計算は、以下の手順で行います。

  • 荷重の算出
  • せき板の検討
  • 内バタ材の検討
  • 外バタ材の検討
  • セパレーターの検討

荷重の算出

荷重を算出する際に必要な情報は以下の5つです。

  • 部材種別
  • 打設速度
  • コンクリート温度
  • 打設高さ
  • コンクリート単位体積重量

コンクリートの側圧を計算する式は、部材毎に以下の通り決まっています。

種別R<2m/hR≥2m/h
柱    P=Wc/3{1+100R÷(T+20)}≤150P=Wc/3{1+100R÷(T+20)}≤150
P=Wc/3{1+100R÷(T+20)}≤150P=Wc/3{1+(150+30R)÷(T+20)}≤100
土木学会によるコンクリートの側圧算定式(kN/m2)

P : 側圧(kN/m2)
Wc : コンクリートの単位体積重量(kN/m3)
R : 打上がり速度(m/h)
T : 型枠内のコンクリート温度(℃)

コンクリート標準示方書に基づき、下記3つの中での最小値を側面に作用するコンクリート単位荷重(kN/m2)とします。

  • 算出式による側圧
  • 算出式の上限値(100or150)
  • 液圧

計算式の上限値は、柱の場合には150kN/m2、壁の場合には100kN/m2である。この計算式には、最終的な打ち上がり高さを含まないため、打上がり速度、コンクリート温度および最終的な打上がり高さによっては、計算式で求まる側圧が液圧よりも大きな値になる場合がある。しかし、側圧の最大値は液圧以下であるため、液圧よりも大きな値に計算される場合には液圧を用いてよい。壁の場合、打込み速度が2m/h未満では、柱の場合と側圧にあまり違いが認められないため、柱の式を用いて計算してもよい。

(中略)

液圧とは、静止状態にある液体に重力が働いている場合の圧力であり、コンクリートを液体とみなし、式(解 8.2.4)に示されるように、コンクリートの単位体積重量と打込み高さを乗じて求めることができる。

Pw=Wc・H (解 8.2.4)

ここに、

Pw : 液圧(kN/m2)
Wc : コンクリートの単位体積重量 (23.5kN/m3)
H : フレッシュコンクリートの打込み高さ(m)

2023年制定 コンクリート標準示方書[施工編:施工標準]

具体的な計算例は以下の通りです。

  • 部材種別 : 柱
  • 打設速度 : 0.5m/hr
  • コンクリート温度 : 15℃
  • 打設高さ : 3.38m
  • コンクリート単位体積重量 : 23.5kN/m3
ツッキー

底型枠の時と同様に、算出したコンクリート単位荷重(kN/m2)を各部材の検討時に使用します。

せき板の検討

せき板の検討を行う際に必要な情報は以下の2つです。

  • せき板の種類(内バタ材の設置方向)
  • 内バタ材の設置間隔

せき板の種類によって断面性能が決まっています。また、内バタ材の設置方向によってせき板の荷重負担幅が変わります。内バタ材の設置間隔は、計算時に使用する梁材の長さです。

底型枠の荷重計算と同様に、側型枠の場合もせき板を等分布荷重の単純梁として考えるのが一般的です。以下の式が成り立つかどうかを確認してください。

  • 曲げ応力度≤せき板の許容曲げ応力度
  • たわみ≤3mm

具体的な計算方法は以下の通りです。

  • せき板の種類(内バタ材の設置方向) : 合板12mm幅900mm(繊維に直角に根太設置)
  • 内バタ材の設置間隔 : 300mm

内バタ材の検討

内バタ材の検討を行う際に必要な情報は以下の3つです。

  • 内バタ材の種類
  • 内バタ材の設置間隔
  • 外バタ材の設置間隔

内バタ材の主な使用材料は、単管、60角鋼管などです。使用材料毎に断面性能が決まっています。内バタ材の設置間隔が荷重負担幅、外バタ材の設置間隔が梁材の長さ、にそれぞれ該当します。

荷重検討を行う際は、内バタ材を等分布荷重の単純梁として考えることが多いです。以下の式が成立するかどうかを確認してください。

  • せん断応力度≤内バタ材の許容せん断応力度
  • 曲げ応力度≤内バタ材の許容曲げ応力度
  • たわみ≤3mm

具体的な計算例は、下記の通りです。

  • 内バタ材の種類 : 角パイプ□-60×60×2.3
  • 内バタ材の設置間隔 : 300mm
  • 大引材の設置間隔 : 900mm

外バタ材の検討

外バタ材の検討を行う際に必要な情報は以下の5つです。

  • 外バタ材の種類
  • 外バタ材の使用本数
  • 荷重モデル
  • 外バタ材の設置間隔
  • セパレーターのピッチ

外バタ材は2本セットで使用することが一般的です。フォームタイによって2本の外バタ材を固定します。外バタ材の種類によって決まる断面性能のうち、下記の値は2倍になるので注意してください。

  • せん断応力用断面積(mm2)
  • 断面係数(mm3)
  • 断面2次モーメント(mm4)

外バタ材の荷重検討を行う際は、外バタ材を単純梁、もしくは片持梁として考えます。単純梁か片持梁かによって値の算出方法が異なるので、荷重モデルを確認しましょう。外バタ材の設置間隔が荷重負担幅です。セパレーターのピッチは梁材の長さに該当します。片持梁の場合は、セパレーターから外バタ材端部までの長さが梁材の長さです。

荷重モデルに応じた算出方法によって、以下の式が成立するかどうかを確認してください。

  • せん断応力度≤外バタ材の許容せん断応力度
  • 曲げ応力度≤外バタ材の許容曲げ応力度
  • たわみ≤3mm

具体的な計算例は、以下の通りです。

  • 外バタ材の種類 : 角パイプ□-60×60×2.3
  • 外バタ材の使用本数 : 2本
  • 荷重モデル : 単純梁
  • 外バタ材の設置間隔 : 900mm
  • セパレーターのピッチ : 600mm

セパレーターの検討

セパレーターの検討を行う際に必要な情報は以下の3つです。

  • セパレーターの種類
  • 外バタ材の設置間隔
  • セパレーターのピッチ

セパレーターの種類によって許容荷重が決まっています。外バタ材の設置間隔とセパレーターのピッチは、セパレーター1本あたりにかかる荷重を算出するために必要です。

荷重検討を行う際は、以下の式が成立するかどうかを確認してください。

  • セパレーター1本あたりにかかる荷重≤許容荷重

具体的な計算例は、以下の通りです。

  • セパレーターの種類 : 普通セパW3/8
  • 外バタ材の設置間隔 : 900mm
  • セパレーターのピッチ : 600mm

型枠支保工の強度計算を自動化するExcelシートの解説

底型枠と側型枠のそれぞれについて、強度計算を自動化するExcelシートの使用方法を解説します。

型枠支保工計算を自動化するExcelを公開中

各シートの内容は以下の通りです。

  • マスターデータ
  • 底型枠計算データ入力用
  • 底型枠の強度自動計算
  • 側型枠計算データ入力用
  • 側型枠の強度自動計算
  • 荷重の算出用
  • せき板検討用
  • 単純梁検討用
  • 片持梁検討用
  • 支保工検討用
  • セパレーター検討用
  • 専用ブレース検討用
  • 単管ブレース検討用

マスターデータ

各荷重計算の際、部材やモデル毎に固有の値を使用することが頻繁にあります。固有の値をマスターデータにあらかじめ用意しておくことで、計算の手間を大幅に省くことが可能です。既に固有の値を入力しているので、基本的にマスターデータを触る必要はありません。

他のシートの値を参照する

(前略)

いろいろな表で何度も使用されるデータ(例えば、商品やサービスの一覧表など)は独立した専用のシートにまとめておき、各シートから参照するようにします。そうすれば、名称や価格の入力ミスを未然に防ぐことができます。

なお、他のシートを参照するようにしておけば、名称や価格が変更された場合でも、参照先シートの一箇所を修正するだけで、ブック内の全データを修正できます。もし各シート内で個別にベタ打ちしていた場合は、ブック中のさまざまな箇所に記載されている商品名を1つずつ検索して修正しなければなりません。しかし、そうした状況では、「修正し忘れ」というミスも発生してしまうでしょう。

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ツッキー

各資材の断面性能や許容荷重は、荷重検討をする際に何度も使用するデータです。XLOOKUP関数を使用して、使用資材が決まれば自動でマスターデータを参照するように設定しています。

底型枠計算データ入力用

底型枠の検討を行う上で必要な情報を入力するためのシートです。データの入力規則を設定しているので、間違った情報を入力する心配はありません。

入力不要の「選択リスト」でさらに効率化

(前略)

商品名など選択肢が限られているものは、リストを作成しましょう。[データの入力規則]ダイアログボックスからリストを設定します。引数[検索値]の候補をドロップダウンリストから選べるようにすることで、入力ミスを減らす仕組みが作れます。

できるYOUTUBER式 EXCEL現場の教科書 長内孝平
ツッキー

特に使用材料は、自動計算用シートで関数の引数[検索値]として使用します。選択リストを作成することで、エラーの発生を防ぎます。

底型枠の強度自動計算

底型枠計算用データの入力が終われば、自動で強度計算を行います。底型枠の強度計算方法を解説した際の具体例は、前のステップで入力したデータを用いて自動計算したものです。

各部材の断面性能や許容荷重については、XLOOKUP関数を用いてマスターデータを参照するように設定しています。

XLOOKUP関数

XLOOKUP 関数は、範囲または配列を検索し、最初に見つかった一致に対応する項目を返します。 一致するものがない場合、XLOOKUP は最も近い (近似) 一致を返します。 

=XLOOKUP(検索値, 検索範囲, 戻り配列, [見つからない場合], [一致モード], [検索モード]) 

Microsoftサポート XLOOKUP関数

側型枠計算データ入力用

側型枠の検討を行う上で必要な情報を入力するためのシートです。底型枠と同様にデータの入力規則を設定しています。

側型枠の強度自動計算

側型枠計算用データを入力すれば、自動で強度計算を行います。底型枠と同様に、側型枠の強度計算方法を解説した際の具体例は、前のステップで入力したデータを用いて自動計算したものです。

ツッキー

自動計算があっているかどうかは、必ず確認してください。

荷重の算出用

荷重の算出を個別に行うためのシートです。底型枠の荷重を算出する場合は、以下の青枠を入力してください。

側型枠の荷重を算出する場合は、以下の青枠を入力してください。

せき板の検討用

せき板の検討を行うためのシートです。以下の青枠を入力してください。単位荷重については、前ステップで算出した値を入力しましょう。底型枠、側型枠のどちらの場合でも対応可能です。

単純梁の検討用

荷重モデルが等分布荷重の単純梁の部材を検討するためのシートです。以下の青枠にデータを入力します。写真では根太材になっていますが、大引材やバタ材など、検討したい部材の名称に変えて使用してください。

ツッキー

等分布荷重の単純梁の場合の計算式は以下の通りです。

$$ Qmax = \frac{WL}{2} $$
$$ Mmax = \frac{WL^{2}}{8} $$
$$ \delta = \frac{5WL^{4}}{384EIx}$$

ここに、
Qmax : 最大せん断力
Mmax : 最大曲げモーメント
δ : たわみ
W : 単位荷重
L : 梁材長さ
E : ヤング係数
Ix : 断面2次モーメント

片持梁の検討用

荷重モデルが等分布荷重の片持梁の部材を検討するためのシートです。以下の青枠にデータを入力します。片持梁の検討をする部材は大引材がほとんどですが、バタ材などの場合も部材名称を変えて使用してください。

ツッキー

等分布荷重の方持梁の場合の計算式は以下の通りです。

$$ Qmax = WL $$
$$ Mmax = \frac{WL^{2}}{2} $$
$$ \delta = \frac{WL^{4}}{8EIx}$$

ここに、
Qmax : 最大せん断力
Mmax : 最大曲げモーメント
δ : たわみ
W : 単位荷重
L : 梁材長さ
E : ヤング係数
Ix : 断面2次モーメント

支保工の検討用

支保工の検討を個別に行うためのシートです。

大引材を単純梁として検討するような断面の場合は、以下の青枠にデータを入力します。

大引材を片持梁として検討するような断面の場合は、支保工から大引材端部までの離れの情報も必要です。以下の青枠にデータを入力して計算します。

セパレーターの検討用

セパレーターの検討を個別に行うためのシートです。以下の青枠にデータを入力してください。

専用ブレースの検討用

専用ブレースの検討を行うためのシートです。勾配なしの場合、勾配ありの場合共に青枠にデータを入力すれば計算できます。

単管ブレースの検討用

単管ブレースの場合は、先ほど紹介した底型枠の強度自動計算シートに対応していません。本シートを使用して個別に計算してください。他のシートと同様に青枠にデータを入力すれば自動で計算できます。

型枠の勾配がない場合の計算例は以下の通りです。

型枠の勾配がある場合の計算例は以下の通りです。

ツッキー

単管ブレースの場合は、クランプとブレースそれぞれの許容水平耐力を計算し、小さい方の値を単管ブレースの許容荷重として強度を検討します。

型枠支保工の強度計算方法を理解した上で計算を自動化しよう

この記事では、型枠支保工の強度計算方法を解説しました。底型枠と側型枠それぞれの検討フローは以下の通りです。

底型枠の検討フロー
  • 荷重の算出
  • せき板の検討
  • 根太材の検討
  • 大引材の検討
  • 支保工の検討
  • 水平力の検討
側型枠の検討フロー
  • 荷重の算出
  • せき板の検討
  • 内バタ材の検討
  • 外バタ材の検討
  • セパレーターの検討

型枠支保工の強度計算をするために必要な情報は以下の通りです。図面から以下の情報を読み取って、紹介したExcelシートに入力すれば、自動で強度計算をすることができます。

底型枠の検討で必要な情報
  • コンクリート荷重の算出方法
  • コンクリートの厚さ
  • せき板の使用材料
  • 根太材の使用材料
  • 根太材の設置間隔
  • 大引材の使用材料
  • 大引材の荷重モデル
  • 大引材の設置間隔
  • 支保工の使用材料
  • 支保工の大引材方向の設置間隔
  • 水平力の算出方法
  • 型枠の勾配
  • 専用ブレースの種類
  • 専用ブレースの配置スパン
  • 専用ブレースの配置高さ
  • 専用ブレースの配置間隔
側型枠の検討で必要な情報
  • コンクリート部材の種別
  • コンクリート打設速度
  • コンクリート温度
  • コンクリート打込み高さ
  • コンクリート単位体積重量
  • せき板の使用材料
  • 内バタ材の使用材料
  • 内バタ材の設置間隔
  • 外バタ材の使用材料
  • 外バタ材の使用本数
  • 外バタ材の荷重モデル
  • 外バタ材の設置間隔
  • セパレーターの使用材料
  • セパレーターのピッチ

型枠支保工の強度計算をゼネコンの現場監督が最初から行う機会は確かに少ないです。資材リース会社に計算してもらい、その計算書をチェックすることがほとんどだと思います。私自身、リース会社から受け取った計算書のチェックをしたことしかありません。

しかし、本記事で紹介したExcelシートを使用すれば、計算書のチェックを一瞬で終わらせることができます。仮にリース会社から計算書を受領するのが遅くなったとしても、自力で作成することが可能です。計算原理を理解した上で使用すれば、間違いなく業務の生産性は向上します。

建設業界では、深刻な人材不足と働き方改革により、生産性の向上が求められています。この記事によって、少しでも日々の業務効率が向上すれば嬉しいです。一緒に業務のICT化をどんどん進めて建設業界を盛り上げていきましょう!

型枠支保工計算を自動化するExcelを公開中
ツッキー

足場の強度計算方法は以下の記事で解説しています。足場強度計算を自動化するExcelシートのダウンロードも可能です。

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この記事を書いた人

ツッキーのアバター ツッキー 土木施工監督

【20代土木施工監督】
橋づくり3年目
土木施工管理の仕事で得た経験と知識を発信

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