- 盛土工の担当になったんだけど…
- 未経験だから何をすれば良いか分からない
- 盛土工の施工管理業務を具体的に教えて!
土木工事には必ずついてくると言っても過言ではない盛土の施工。地面に土砂を盛って地表面を平らにしたり、高くしたりするための工事です。入社してすぐに盛土工の担当者を任されて、頭を抱えている若手現場監督も多いはず。
私自身、新卒でゼネコンに入社して半年くらい経った時に、ヤード造成のための盛土工の施工管理を担当しました。資機材の手配の方法や盛土の計算方法が分からず、手探り状態で施工管理を行いました。
そこでこの記事では、未経験者でも迷わずに施工管理業務ができるように、盛土工の施工手順を分かりやすく解説します。この記事を読めば、「盛土工の施工管理は何をすれば良いのか」が分かります。
私が若手現場監督として盛土工の施工管理を行った経験をまとめました。盛土工について詳しく知りたい方は最後まで読んでください。
盛土工の概要
構造物を作る際は、計画に従って地形を整える必要があります。整地するために土を切り崩したり、運んだり、盛ったりする作業を土工と言います。土工のうち、地盤に土を盛る工事が盛土工です。盛土工は、以下の6つの工程に分かれます。
- 掘削…地山を削って土をほぐす
- 積込…ほぐした土を重機に積む
- 運搬…土を重機で運ぶ
- 荷下ろし…盛土箇所に土を下ろす
- 敷均し…土を平坦に均す
- 締固め…敷均した土を転圧する
私が担当した盛土工では、商社に注文して、地山から掘削した土を現場に運搬してもらいました。そのため、①〜③の作業に関しては経験しておりません。本記事では、④〜⑥の施工管理を中心に解説します。
私が経験した盛土工の目的は、工事用道路を拡幅することでした。
あくまで仮設のため、本設の盛土工の管理とは異なる点もあると思います。あらかじめご了承ください。
盛土工の工程管理について
盛土工の工程管理では、主に以下の8つを行います。
- 盛土範囲の明示
- 埋設物や廃棄物の有無を確認
- 施工業者との打ち合わせ
- 作業手順書の作成
- 土量計算
- 盛土材料の注文
- 機材の手配
- 搬入車両の受け入れ
盛土範囲の明示
まず初めに、盛土する範囲を現場に明示します。土地の境界を犯さないように、トランシットを用いて境界を位置出ししましょう。あらかじめ図面で境界の座標を確認してから、測量を実施する必要があります。盛土範囲の明示に関しては、下記の方法が一般的です。
- 丁張り掛け
- 鉄ピンとトラロープで明示
前者は、本設の土工で主に用いられる方法です。丁張りをかけることによって、位置と高さを明示します。後者は、仮設の土工や、高さの情報が不要な時に用いる方法です。私自身、鉄ピンとトラロープで盛土範囲を示しました。高さは既設の工事用道路に合わせれば良かったからです。
土地の境界線が盛土の法尻になります。
法肩にすると、法尻が境界を犯すので注意が必要です。
埋設物や廃棄物の有無を確認
盛土する範囲を明示したら、範囲内に埋設物や廃棄物がないかを確認しましょう。長年使用されていない土地を借りて使用する場合、埋設物や廃棄物が出てくる可能性があります。私が担当した工事では、伐採を終えた時点で盛土範囲内に下記の物が見つかりました。
- 境界標
- 不法投棄物
境界標とは、石、プラスチック、コンクリートなどで作られた、境界を明示するための杭のことです。盛土で埋めてしまうと、どこに境界標があったのか分からなくなります。工事が終わって復旧する際に、重機で誤って位置をずらしたり壊したりしては大変です。トランシットで位置座標を確認してから、引き抜いて保管しましょう。
不法投棄物が出てきた場合、勝手に盛土範囲外への移動や産廃処理をしてはいけません。必ず土地の所有者に処理方法を確認する必要があります。投機物を見つけた時点で写真を撮影して、土地の所有者に現況を説明できるように段取りしましょう。最終的に土地の所有者が決定した方針で、不法投棄物を処理します。
どちらの場合も、必ず上司に報告しましょう。
発注者と第三者に対して説明義務がある事案なので、上司に対応してもらう必要があります。
施工業者との打ち合わせ
盛土範囲の明示後、施工業者と現場で打ち合わせを行います。どの順番で盛土を行うのか、現場で図面を見せながら説明しましょう。施工業者の方は、現場で実際の条件を見ながら以下の事項を検討してくれます。
- 人員について
- 作業日数について
- 必要な機械について
- 作業手順について
これらの検討事項については、あらかじめこちらから前提条件を伝える必要があります。例えば、「◯日の△時までに終わらせてほしい。」「重機は0.45バックホウ2台で作業してほしい。」などです。前提条件を踏まえて、適切な人員・工程・機械で作業できるように調整してもらいましょう。
工程や使用する重機に関しては、打ち合わせ前にあらかじめ計画しておくと、話がスムーズに進みます。
作業手順書の作成
施工業者との打ち合わせの内容をもとに、作業手順書を作成します。作業手順書には、以下の事項を記載するのが一般的です。
- 施工順序について
- 予想される災害について
- 災害防止対策について
- 使用資機材について
- 必要資格について
施工順序は具体的に示しましょう。盛土作業の場合は下記のステップに分かれます。
- 土木シート敷設
- 岩ズリ搬入
- 荷下ろし
- 敷均し
- 締固め
そして、各作業に対して災害の予想と防止対策を記入。また、施工にあたって使う資機材は何か、どんな資格を持っている人が作業を行うのかも合わせて書きます。
盛土作業の場合は、重機と作業員の接触や、法肩からの転落が予想されます。
土量計算
次に、搬入する土量の計算を行います。明示した盛土範囲の面積と仕上がり面までの高さをもとに、土量の体積を求めましょう。その際、土量の変化率を考慮する必要があります。
土はほぐすと体積が増え、締め固めると体積は減少する。このようにそれぞれの体積が変化することを土量の変化と言い、その割合を土量の変化率という。土量の変化率には、ほぐし率Lと締固め率Cとがある。
ほぐし率L = ほぐした土量[m3] / 地山土量[m3]
締固め率C = 締固め土量[m3] / 地山土量[m3]
ハンディブック土木 粟津清蔵【監修】 第8編 土木施工 P.410
現場に搬入される土は、地山から掘削してほぐされた状態です。逆に、現場で作業を終えた後は、盛土されて締固められた状態になります。よって、搬入土量をY、盛土範囲の体積をXとして、下記の計算を行います。
仮設用の盛土工の場合、ここまで厳密に計算する必要はありません。
私は、盛土範囲の体積の2割増しで土を注文し、作業の進捗を見ながら搬入土量を調整しました。
盛土材料の注文
土量計算が終われば、盛土材料の注文を行います。盛土材料の選定条件は下記です。
盛土材料としては、下記の材料を使用することが望ましい。
2022年版 1級土木施工第一次検定徹底図解 テキスト&問題集 P.18
- 施工が容易で締固めた後の強さが大きい。
- 圧縮性が少ない。
- 雨水などの侵食に対して強い。
- 吸水による膨潤性が低い。
盛土材料の最大粒径が大きくなるほど、値段は安くなりますが、上記の条件は満たしにくいです。上司に相談した上で、適切な盛土材料を選びましょう。私は、岩ズリを注文しました。
また、盛土材料を注文する際は、搬入車両の台数についても言及しましょう。何台で何回転して土を運ぶかによって、搬入土量が変わるからです。例えば、下記の条件を例に考えます。
- 3日間で1200m3必要
- 地山から現場まで往復で1時間
- ダンプ1台あたり5m3積込可能
この場合、1日あたりに必要なダンプはのべ80台(1200÷3÷5)です。8時間で盛土材料の搬入を終えたい場合、ダンプ10台で8回転する必要があります。このように、1日あたりの搬入土量から逆算して、ダンプが何台必要なのかを必ず伝えてください。
機材の手配
作業手順書に記載した機材の手配を行います。私が担当した盛土工で実際に手配した機材は下記の通りです。
- バックホウ
- コンバインドローラー
- ダンプトラック
バックホウ
バックホウは、掘削・積込・敷均し・転圧の全ての作業において使える重機です。土を現場に搬入する場合、主に敷均しと転圧のために使用します。バケットの大きさが選べるので、作業の規模に適したサイズのバックホウを手配しましょう。
コンバインドローラー
コンバインドローラーは鉄製の車輪とゴム製の車輪を前後で組み合わせているタイプの小型ローラーです。締固め作業に使用します。
ダンプトラック
ダンプトラックは、土砂などを運搬し、荷台を傾けて積み荷を下ろす車両です。私が担当した工事では、余った土をバックホウで積み込んで、別の盛土範囲に運搬するために使用しました。
搬入車両の受け入れ
全ての段取りが終わればいよいよ盛土作業です。盛土作業中の工程管理では、主に搬入車両の受け入れを行います。盛土材料の荷下ろし場所をダンプの運転手に伝えましょう。作業の進捗に応じて、作業員さんと会話をしながら、適切な荷下ろし場所を判断します。
ダンプの台数が多い場合、荷下ろし場所の判断が遅いと現場内で渋滞してしまいます。
また、他作業で使用するために、異なる材料を積み込んだ車両が来る場合もあるので注意が必要です。
盛土工の品質管理について
盛土工の品質管理では、主に以下の2つを行います。
- 敷均し厚の管理
- 締固め度の管理
私が経験したのは、工事用道路拡幅用の盛土工なので、厳密な品質管理を行なっていません。
経験がないので、簡易的な説明になります。
敷均し厚の管理
敷均し厚とは、締め固める層の厚さのことです。「道路土工ー施工指針」により、下表に定められています。
盛土の種類 | 締固め厚さ | 敷均し厚さ |
---|---|---|
路体・堤体 | 30cm以下 | 35〜45cm以下 |
路床 | 20cm以下 | 25〜30cm以下 |
締固め度の管理
締固めの管理方法には、下記の2種類があります。
- 品質規定方式
- 工法規定方式
前者は、盛土に必要な品質を仕様書に明示し、締固め工法は施工業者に任せる方法です。後者は、使用する締固め機械の種類や締固め回数、敷均し厚など、工法そのものを仕様書に規定します。
盛土工の安全管理について
盛土工の安全管理では、主に以下の3つを行います。
- 過積載の確認
- 重機作業時の立入禁止または誘導者の配置
- 警報検知システムの使用
過積載の確認
盛土材料を搬入するダンプカーが過積載していないかを適宜確認しましょう。ダンプカーには、計量装置が搭載しているのが一般的です。メーターの値が、最大積載荷重を超えていないかどうかを確かめます。場合によっては、発注者から過積載確認の有無を質問される場合があります。確認状況の写真を撮影しておくと安心です。写真管理の際は、必ず下記の項目が写るように撮影しましょう。
- 伝票
- 車のナンバープレート
- メーターの値
重機作業時の立入禁止または誘導者の配置
バックホウやコンバインドローラーは、車両系建設機械に該当します。よって、重機で盛土作業をする場所は、安衛則158条と159条により、立入禁止または誘導者の配置を実施する必要があります。
(接触の防止) 第百五十八条 事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、運転中の車両系建設機械に接触 することにより労働者に危険が生ずるおそれのある箇所に、労働者を立ち入らせてはならない。ただし、 誘導者を配置し、その者に当該車両系建設機械を誘導させるときは、この限りではない。 2 前項の車両系建設機械の運転者は、同項ただし書の誘導者が行なう誘導に従わなければならない。 (合図) 第百五十九条 事業者は、車両系建設機械の運転について誘導者を置くときは、一定の合図を定め、誘導 者に当該合図を行なわせなければならない。 2 前項の車両系建設機械の運転者は、同項の合図に従わなければならない。労働安全衛生規則 第二編 第二章 建設機械等(第百五十一条の百七十五-第二百三十六条)
具体的な立入禁止措置は、以下の方法が挙げられます。
- カラーコーン・コーンバーによる明示
- 「重機作業中・立入禁止」などの注意喚起看板の設置
警報検知システムの使用
重機と作業員の接近をセンサーで感知して警報を出すシステムを準備します。重機との接触災害を防止することが目的です。重機側にセンサーを、作業員側にICタグを付けることによって、両者が近づいたら反応します。私の現場では、下記の2つを使用しました。
- ヘリマシステム
- みはり組
ヘリマシステムは、センサーの範囲が360度です。旋回作業を行うバックホウに取り付けました。みはり組は、進行方向の作業員にだけ警報を出します。直線的な動きをするコンバインドローラーに最適です。
ヘリマシステムの紹介動画はこちらです。
盛土工の施工管理まとめ
本記事では、盛土工の施工管理について徹底解説しました。工程管理、品質管理、安全管理の各項目を再度まとめます。
- 盛土範囲の明示
- 埋設物や廃棄物の有無を確認
- 施工業者との打ち合わせ
- 作業手順書の作成
- 土量計算
- 搬入車両の手配
- 資機材の手配
- 搬入車両の受け入れ
- 敷均し厚の管理
- 締固め度の管理
- 過積載の確認
- 重機作業時の立入禁止または誘導者の配置
- 警報検知システムの使用
私は、初めての盛土工に戸惑いながら手探りで施工管理を行った経験があります。その際、重要であると感じたポイントをまとめました。上記の管理項目をおさえておけば、盛土工の施工管理は滞りなく行うことができます。ぜひ、本記事の内容を参考に盛土工の施工管理業務を進めてください。