- 型枠支保工の担当になったんだけど…
- 未経験だから何をすれば良いか分からない
- 型枠支保工の施工管理業務を具体的に教えて!
型枠を支持する目的で実施される型枠支保工。コンクリート構造物を構築する際に、型枠の土台となる仮設の支保工材を組み立てる工事です。ゼネコンに入社してすぐに型枠支保工の担当者を任されて、悩んでいる若手現場監督も多いはず。
私自身、新卒でゼネコンに入社して半年くらい経った時に、固定支保工式架設工法による橋梁工事の担当者になり、型枠支保工を経験しました。資機材の手配や現場で何を管理して良いのかが分からず、手探り状態で施工管理を行いました。
そこでこの記事では、未経験者でも迷わずに施工管理業務ができるように、型枠支保工の施工手順を分かりやすく解説します。この記事を読めば、「型枠支保工の施工管理は何をすれば良いのか」が分かります。
私が若手現場監督として型枠支保工の施工管理を行った経験をまとめました。型枠支保工について詳しく知りたい方は最後まで読んでください。
型枠支保工の概要
型枠支保工は、コンクリート構造物の施工にあたり、コンクリートが基準強度を発現するまで仮に支えておく仮設構造物のことです。機能性、経済性、仮設性が求められるとともに、十分な強度と安全性を有している必要があります。現場の条件に応じて、適切な型枠支保工を選定することが重要です。
代表的な型枠支保工としては、以下の物が挙げられます。
- パイプサポート
- 単管支柱
- 軽量型システム型枠支保工
- 建枠(鋼管枠)
- 四角支柱(組立鋼管柱)
- 組立鋼柱
- 重量型システム型枠支保工
- 組立梁
- 形鋼
施工性、強度、汎用性の高さから、軽量型システム型枠支保工と建枠(鋼管枠)が一般によく使用されている支保工材です。足場材としても利用できるなど、幅広い用途に対応できます。
私が経験した橋梁上部工の現場では、軽量型システム型枠支保工のクサビ結合式を採用しました。
型枠支保工の工程管理について
型枠支保工の工程管理では、主に以下の10種類を行います。
- 地盤高の測量
- 型枠支保工図面の作成
- 型枠支保工の計算書作成
- 施工業者との打ち合わせ
- 作業手順書の作成
- 型枠支保工材の注文
- 現場での位置だし
- 重機の手配
- 搬入車両の受け入れ
- ジャッキ高さ調整
地盤高の測量
まず初めに、型枠支保工を組み始める場所の地盤高を測量しましょう。レベルを用いて地盤のエレベーションを求めます。地盤がほぼ水平の場合は、1箇所を測量すれば良いです。しかし、下記のような場合は必要に応じて複数箇所を測量する必要があります。
- 段差がある場合
- 法面になっている場合
- 障害物がある場合
また、型枠支保工を組み立てる前に不陸整正を実施する場合も多いです。その場合、不陸整正の目標高さを計画するためにも、地盤高の値を使用します。
地盤高の測量は、型枠支保工計画のための下準備です。
地盤から型枠で支持する構造物までの距離を求めることが目的になります。
型枠支保工図面の作成
地盤高の測量を終えたら、型枠支保工の計画に移ります。施工条件から型枠支保工の形式を決定し、与えられた諸条件を考慮しながら型枠支保工組立図を作成しましょう。組立図の作成について、仮設構造物の計画と施工では、下記のように述べられています。
組立図としては、構造物の種類によって内容は種々雑多であるが、全体図・標準断面図・側面図・平面図・型枠割付け図・部分詳細図などが必要であり、支保工などで支持物として既設構造物や本体構造物を利用する場合には、構造物への埋設金物・後施工アンカー・切欠き・局部補強等を示す図面も必要となる。大型の型枠では、コンクリートの投入口・検査口等を組立図に明示し、支保工では、高さ調節及び型枠支保工の取外しに使用するジャッキ類やキャンバー等を組立図上明らかにする。
仮設構造物の計画と施工【2010年改訂版】 土木学会
上記に基づきつつ、実際の型枠支保工計画は下記のフローで行います。
- 最上部のジャッキ設置高さを決める
- 地盤高との差から、鉛直材の配置を決める
- 荷重分担幅等の条件を考えて、水平材の配置を決める
- ブレース材の配置を決める
これらをあらかじめ検討・決定した上で、実際に図面の作成を進めていきましょう。
荷重の計算しながら図面を作成する必要があるので、かなり時間がかかります。
支保工材のリース会社に図面を作成してもらう場合が多いです。
その場合でも、依頼やチェックをするために最低限の知識は必要です。
型枠支保工の計算書作成
型枠支保工を計画する際は、必ず設計計算を行います。型枠支保工がコンクリート荷重や作業荷重に耐久できるかどうかを検討するためです。もし計算によって不安定な構造であることが判明したら、型枠支保工の計画をやり直す必要があります。型枠支保工の設計計算は、以下の手順で行います。
- 設計条件について
- 型枠の検討
- 支保工の検討
まず初めに、設計条件を明確にします。荷重条件、使用材料の許容応力や支保工の許容荷重、ヤング率などの情報が必要だからです。次に、型枠の検討を行います。作用荷重に対して、せき板・バタ材・大引き・セパレーターが耐久できるかどうかを計算しましょう。そして最後に、支保工の検討を行います。支保工の許容荷重が、支保工に作用する垂直荷重及び水平荷重よりも大きいかどうかを確認しましょう。
水平荷重については、安衛則で規定されています。
型枠支保工の上端に設計荷重の2.5%(建枠)または5%(その他)に相当する水平方向の荷重が作用することを想定して計算しましょう。
型枠支保工の強度計算方法は、以下の記事で解説しています。計算を自動化するExcelシートのダウンロードも可能です。
施工業者との打ち合わせ
型枠支保工図面と計算書の作成が終われば、施工業者と打ち合わせを行います。作成した図面を見せながら、以下の項目について打ち合わせをしましょう。
- 人員について
- 作業日数について
- 必要な機械について
- 型枠支保工材搬入日について
- 作業手順について
これらの検討事項については、あらかじめこちらから前提条件を伝える必要があります。例えば、「◯日の△時までに終わらせてほしい。」などです。前提条件を踏まえて、適切な人員・工程・機械で作業できるように調整してもらいましょう。
型枠支保工材の搬入日時については、必ず相談した方がいいです。
無計画に支保工材を現場に搬入して怒られた経験があります。
作業手順書の作成
施工業者との打ち合わせの内容をもとに、作業手順書を作成します。作業手順書には、以下の事項を記載するのが一般的です。
- 施工順序について
- 予想される災害について
- 災害防止対策について
- 使用資機材について
- 必要資格について
施工順序は具体的に示しましょう。型枠支保工の場合は下記のステップに分かれます。
- 敷板の設置
- ベースジャッキの設置
- ベースと敷板の釘止め固定
- 支柱材の設置
- 根がらみの設置
- ベースジャッキ高さ調整
- 水平つなぎ材の設置
- ブレース材の設置
- 足場板の設置
- 支柱材の設置
- 以降⑦〜⑩の繰り返し
- 大引き受けジャッキの設置
- 大引き受けジャッキ高さ調整
- 大引き材の設置
- 根太材の設置
そして、各作業に対して災害の予想と防止対策を記入。また、施工にあたって使う資機材は何か、どんな資格を持っている人が作業を行うのかも合わせて書きます。
型枠支保工は、足場工とは異なり先行手すりや幅木の設置を行いません。そのため、墜落のリスクが高いです。
高所では必ず親綱に安全帯をかけることを徹底しましょう。
また、開口部は隙間塞ぎ板やネットを設置するなどの対策も重要です。
型枠支保工材の注文
型枠支保工の計画や施工業者との打ち合わせを終えたら、型枠支保工材の数量を拾って注文を行います。クサビ緊結式の型枠支保工で必要になる資材は下記の通りです。
- 敷板
- ベース金具
- 支柱材
- 水平つなぎ材
- ブレース材
- 足場板
- 単管
- 角鋼管
- クランプ
- カラー材
- 大引き受けジャッキ
図面を読み取って、上記の必要な資材の数量を漏れなく拾い上げる必要があります。数量を拾い終えたら、型枠支保工材のリース会社に注文を行いましょう。注文の際は、製品重量と注文個数をかけ合わせて、資材の総重量を計算しなければいけません。搬入車両の大きさや、車両台数を決定するためです。例えば、資材の総重量が15t前後であれば、10tユニックを2台手配します。リース会社にも都合があるので、1週間以上前を目処に車両の手配を行いましょう。
最初から漏れなく資材を拾い上げるのは難しいです。
私自身、いまだに型枠支保工材の数量を完璧に拾うことができません。
支柱材や水平材、足場板は大量に使うので、あらかじめ多めに注文するのがおすすめです。
型枠支保工材の数量拾い方法と重量計算を自動化する方法は、それぞれ以下の記事で解説しています。
現場での位置だし
型枠支保工を図面通りの位置に組み立てるために、現場で型枠支保工を組み立てる位置を明示する必要があります。例えば、以下のような目印を出しておきます。
- 敷板の位置
- 支柱材の設置ライン
- 構造物中心線
設置する型枠支保工によって、現場に必要となる情報は異なります。施工業者の方と相談しながら、型枠支保工をスムーズに組み立てられるように位置だしをしましょう。
PC橋梁上部工のための型枠支保工を組み立てる際は、構造物中心線を明示しました。
重機の手配
作業手順書に記載した重機の手配を行います。型枠支保工で主に必要となる重機は下記の通りです。
- ユニック
- クレーン
ユニック
ユニックは、付属のクレーンを使用して、荷台に資材を積み込んだり、荷台から資材を下ろしたりできる車両です。型枠支保工材を搬出入するのに使います。現場内で足場材をまとめて運搬する時にも便利です。
現場に1台は用意しておくと便利です。
型枠支保工材が足りなかった際に、ユニックを使用してリース会社に直接取りにいくことができます。
クレーン
クレーンは、型枠支保工材を高所に持ち上げるために使用します。型枠支保工をある程度の高さまで組み立てた段階で積極的に活用しましょう。型枠支保工材は手で運ぶこともできますが、危ないのでなるべくクレーンを使用するべきです。
搬入車両の受け入れ
全ての段取りが終われば、いよいよ型枠支保工を実施します。型枠支保工をスムーズに進めるために、型枠支保工材の搬入車両を適切な場所まで誘導しましょう。荷下ろし場所が悪いと、余計な手間がかかるからです。前もって、型枠支保工材の集積場所を決めておくことをおすすめします。
工事ヤードが限られている場合は、資材の集積場所の計画が重要です。
きちんと計画をしておかないと、スムーズに工事が進みません。
ジャッキ高さ調整
型枠支保工を組み立てる際、ジャッキの高さ調整を行います。調整するジャッキは、以下の2つです。
- ベースジャッキ
- 大引き受けジャッキ
前者は、水平材をつなぐためにベースの高さを揃えるのが目的。不陸整正や支保工基礎を前もって実施したとしても、ミリ単位で地盤の高さを揃えることは困難です。ベースジャッキを上げ下げすることによって、高さのズレを調整しまます。目標とする高さは基本的に一定なので、レーザーレベルを使用するのも一つの手です。
後者は、目的構造物の底版高さに支保工の最上部高さを合わせるのが目的。大引き受けジャッキを上げ下げして、狙いの高さになるよう調整します。ベースジャッキとは異なり、各ジャッキで高さが異なることが多いです。例えば橋梁上部工であれば、縦横断の勾配を考慮して高さを決める必要があります。大引き受けジャッキの天端にスタッフをたてて、レベルで確認しながら高さを調整しましょう。
レベルを見ながら大引き受けジャッキを調整する作業は、かなり緊張します。構造物の高さが直接決まるからです。
電卓と野帳を使ってレベル計算を行うのはミスの元なので、Excelを使用するのがおすすめです。
水準測量計算をExcelで行う方法は以下の記事で解説しています。
型枠支保工の安全管理について
- 組立図の作成
- 許容応力の確認
- 各種掲示物の明示
- 型枠支保工についての措置の確認
- 労働安全衛生法に定める設置届の提出
- コンクリート打設時の措置実施
上記は全て労働安全衛生法によって定められいている項目です。
型枠支保工関連の安衛法は他にもありますが、施工管理側がやるべきことをリストアップしました。
組立図の作成
型枠支保工は、施工前に必ず組立図を作成し、組立図によって組み立てることが安衛則第240条によって定められています。組立図には、次の事項を明示するようにしましょう。
- 部材の材質、規格
- 支保工の高さ
- 支柱の間隔
- 支柱の固定方法
- 水平つなぎの取り付け位置
- 支柱と水平つなぎの緊結方法
- 変位防止措置
- 単管控え、筋かいの位置
- はりの配置、寸法
- 支持地盤の仕様
部材の材料は第237条、鋼材の規格は第238条、支保工構造は第239条にてそれぞれ規定されています。各情報を組立図に明記しましょう。
許容応力の確認
型枠支保工の支柱材やはり材の許容応力について、安衛則第241条に規定されています。検討すべき事項は、以下の3つです。
- 曲げ応力
- せん断応力
- たわみ量
例えば、底版型枠の許容応力を検討する際は、せき板・根太・大引き・支柱の各部において上記に関する計算を実施します。
各種掲示物の明示
足場を組み立てる際は、労働安全衛生規則に基づいて実施しなければならない項目があります。そのうちの一部は、掲示物の明示によって規則を守ることができます。具体的には、以下の掲示物です。
- 関係者以外立入禁止(245条)
- 型枠支保工の組立等作業主任者の氏名等の掲示(18条・246条・247条)
安衛則第245条では、型枠支保工の組立て等の作業について規定されています。そのうち、関係者以外の立入禁止措置については、掲示物を掲示することによって対応するのがおすすめです。
また、型枠支保工の組立て、変更、解体の作業時には、型枠支保工作業主任者の選任が必要です。技能講習修了者から選任する必要があり、その職務についても規定されています。よって第18条に基づき、型枠支保工の作業主任者の名前は掲示物等で明示しましょう。
型枠支保工についての措置の確認
型枠支保工の構成については、安永則第242条によって下記の各種類ごとに規定されています。
- 鋼管枠
- パイプサポート
- 単管
- 組立て鋼柱
- はり
それぞれ遵守事項は異なるので、組み立てる際に必ず確認して作業員さんに周知するよう心がけてください。
足場工と同様に、柱脚部の滑動防止をすることが定められています。
型枠支保工の種類によらず、ベース金具と敷板を固定しているか確認してください。
労働安全衛生法に定める設置届の提出
労働安全衛生法第88条により、支柱の高さが3.5m以上の型枠支保工は、機械等設置届出を義務付けられています。具体的な届出の基準を下記に示します。
- 届出様式…機械等設置・移転・変更届
- 届出時期…設置等の作業を開始する日の30日前まで
- 届出の対象…支柱の高さが3.5m以上の型枠支保工
また、型枠支保工の計画作成には、下記のいずれかに該当する者が参画する必要があります。
- 型枠支保工に係る3年以上の実務経験者
- 一級建築士試験合格者
- 一級土木施工管理技術検定合格者
- 一級建築施工管理技術検定合格者
- 工事における安全衛生の3年以上の実務経験者
型枠支保工の計画が完成したら、社内で審査を受けた後に届出を行いましょう。
コンクリート打設時の措置実施
安衛則第244条にて、コンクリート打設作業においての型枠支保工に関する措置が規定されています。具体的には、以下の2つです。
- 作業開始前の点検
- 異常時の作業中止
コンクリート打設作業を開始する前に、作業に関係する型枠支保工を点検しましょう。以上がある場合は直ちに補修する必要があります。また、打設作業中に型枠支保工の異常が発生した場合に備えて、作業中止の措置をあらかじめ定めておきましょう。
私は、固定支保工式架設工法で橋梁上部工のコンクリート打設を経験しました。固定支保工式の場合、地盤に直接支保工を組立てるので、支保工沈下の可能性があります。
そのため、支保工の沈下量をレベルで計測しながら打設を行いました。
型枠支保工の施工管理まとめ
本記事では、型枠支保工の施工管理について徹底解説しました。工程管理、安全管理の各項目を再度まとめます。
- 地盤高の測量
- 型枠支保工図面の作成
- 型枠支保工の計算書作成
- 施工業者との打ち合わせ
- 作業手順書の作成
- 型枠支保工材の注文
- 現場での位置だし
- 重機の手配
- 搬入車両の受け入れ
- ジャッキ高さ調整
- 組立図の作成
- 許容応力の確認
- 各種掲示物の明示
- 型枠支保工についての措置の確認
- 労働安全衛生法に定める設置届の提出
- コンクリート打設時の措置実施
私は、初めての型枠支保工に戸惑いながら手探りで施工管理を行った経験があります。その際、重要であると感じたポイントをまとめました。上記の管理項目をおさえておけば、型枠支保工の施工管理は滞りなく行うことができます。ぜひ、本記事の内容を参考に型枠支保工の施工管理業務を進めてください。