- 足場材を注文しないといけないけど…
- どうやって足場材の数量を拾えばいいか分からない
- 足場材の数量拾い方法を具体的に教えて!
高所で作業を行うためにあらかじめ実施される足場工。仮設の足場材を組み立てて、作業床を確保する工事です。ゼネコンに入社してすぐに足場材の注文を任されて、悩んでいる若手現場監督も多いはず。
私自身、新卒でゼネコンに入社して1年くらい経った時に、橋脚に登るための足場を組み立てる工事の担当者になり、足場材の数量拾いを経験しました。図面を正確に読み取る方法が分からず、手探り状態で必要な足場材を数えました。結果として、足場材の過不足が発生し、現場に多大な迷惑をかけたことがあります。
そこでこの記事では、未経験者でも迷わずに足場材の数量拾いができるように、足場材の拾い方を分かりやすく解説します。この記事を読めば、「足場材を漏れなくダブりなく拾う方法」が分かります。
私が普段どうやって図面から足場材の数を拾っているのかをまとめました。なるべくミスなく足場材の注文をしたい方はぜひ最後まで読んでください。
足場材の数量拾い方法
足場材の数量拾いを行うときは、どの図面でも必ず数える順番を遵守してください。あらかじめ自分で決めた順番通りに数えることで、ミスの可能性は激減するからです。目に見えた資材を片っ端から数えていくだけでは、必ず漏れやダブりが発生します。図面にチャックを付けながら数えていたとしても、「あれ?どこまで数を拾ったっけ??」と途中でパニックになった経験は、誰しも一度はあるはず。図面ごとにやり方を変えていては、間違いなく途中でどこまで数えたかを見失います。マイルールを徹底することで、資材の重複や数え忘れを防ぎましょう。
初めて足場材の数量拾いをした時は、どこまで数えたかを何度も見失いました。最終的に、足場を組みたてる当日になってから足りない資材があると判明した経験があります。
足場材の数量を拾うおすすめの順番は以下の通りです。
- 鉛直材
- 水平材
- 階段
- その他
鉛直材を数える
まず初めに、鉛直材を数えます。ここでいう鉛直材は下記の資材です。
- 支柱材
- 杉敷角
- ジャッキベース
- 下部カラー
土台部分の資材は、支柱材と同時に数えるメリットがあります。というのも支柱材の数量は、基本的に杉敷角とジャッキベースの数量の倍数になるからです。支柱材は、杉敷角とジャッキベースの上部に接続して組立てますよね。もちろんブラケット構造などの例外もありますが、どちらにせよ土台部分と支柱材をまとめて数えるのがおすすめです。
ブラケット構造の場合は、ブラケット部分と通常部分を分けて考えましう。
水平材を数える
次に、水平材を数えます。水平材には、以下の資材が含まれます。
- 水平つなぎ材
- 先行手すり
- 布板
- 幅木
上記の資材は、足場のある段ごとに1セットで考えることができます。よって、まとめて数えるのが合理的です。1セットの各数量を数えて、足場の段数をかけることで計算できます。
階段を数える
そして、階段の個数を数えます。階段を数えたら、合わせて以下の資材も数えましょう。
- 階段手すり
- 階段開口部手すり
- 階段開口部塞ぎ
上記の資材は、階段1つあたりに必要な個数が決まっています。階段と同じタイミングで数えることで、漏れを防ぐことが可能です。
組み立てる足場材の種類によって、数量は異なります。
その他資材を数える
最後に、その他の資材を数えましょう。具体的には、以下のような資材が挙げられます。
- ブラケット
- 壁つなぎ
- 単管パイプ
- クランプ
- 足場板
- 養生ネット
これらの資材は、各図面ごとにそれぞれ数えるしかありません。足場の用途次第で、各資材が必要な時もあれば不要な時もあるからです。詳細図を確認しながら、漏れなく数えましょう。
その他の資材については、一つ一つチェックを付けながら数えるしかありません。
作業員さんによって使い方も様々なので、ある程度多めに頼むのがおすすめです。
【実例】ダーウィン足場材の数量拾い
橋脚に昇降するためのダーウィン足場を例にして、足場材の数量拾いフローを紹介します。
使用図面について
足場材には、日建リース工業(株)のクサビ緊結式足場であるダーウィンを使用しています。
日建リース工業(株) ホームページNDシステム ダーウィン従来の足場の課題である、重い、狭い、階段横が窮屈、持ちにくい、揺れる、うるさい、ゆるむ、外れる等の不満を解消するとともに、手すり先行工法に完全対応した、安全でスピーディーな組立解体が可能な新世代緊結式足場のレンタルです。
今回足場材の数量を拾うダーウィン足場のモデルは以下の通りです。
下部の詳細図はこちら。杉敷角の厚みは35mm。ジャッキベースの高さを115mmに設定し、その上に450mmの支柱材を組み立てています。
平面図は以下の通り。橋脚の中心線に対して左右対称な配置になっています。
ダーウィン足場の数量拾いフロー
ダーウィン足場の数量拾いフローは以下の通りです。
- 【鉛直材】ジャッキベース・杉敷角
- 【鉛直材】支柱
- 【水平材】つなぎ材・先行手すり
- 【水平材】布板・幅木・隙間ふさぎ
- 【階段】階段枠・手すりなど
- 【その他】ブラケット・壁つなぎ
【鉛直材】ジャッキベース・杉敷角
ジャッキベースと杉敷角の数量は、平面図より拾いましょう。図の赤丸が該当します。
品名 | 品番 | 個数 |
---|---|---|
ジャッキベース | A752W | 52 |
杉敷角 | S3503B | 52 |
【鉛直材】支柱
次に、使用している支柱の寸法と、各支柱を何段分使用しているかを数えましょう。先ほど拾ったジャッキベースの個数と各支柱の段数を掛け算すれば、数量を求めることができます。各支柱の寸法及び段数は、正面図を見れば分かります。
今回の足場の場合、450mm、2700mm、3600mmの各支柱が1段ずつ使用されています。よって、数量は下記の通りです。
品名 | 品番 | 個数 |
---|---|---|
支柱連結ホゾ付き | NDP04N | 52 |
支柱連結ホゾ付き | NDP27N | 52 |
支柱連結ホゾ付き | NDP36N | 52 |
仮に、3600mmの支柱材の代わりに1800mmの支柱を2段使うとします。その場合、1800mmの支柱の個数は52×2=104個です。
【水平材】つなぎ材・先行手すり
つなぎ材と先行手すりの数量は、根がらみ部分と足場部分で分けて考えましょう。
根がらみ部
根がらみに使用されるつなぎ材は、平面図より求めることができます。
つなぎ材 | NDT09 | 4個 |
つなぎ材 | NDT12 | 58個 |
つなぎ材 | NDT18 | 16個 |
足場部
足場部分はの水平材は、3層構造になっています。先行手すりと布板と幅木を取り除き、1層目と2・3層目に分けて考えましょう。
1層目の平面図はこちらです。
2・3層目の平面図はこちらです。
各層の平面図よりつなぎ材を足し合わせます。
つなぎ材 | NDT09 | 4×1+4×2=12個 |
つなぎ材 | NDT12 | 46×1+20×2=86個 |
つなぎ材 | NDT18 | 8×1+20×2=48個 |
数式の意味は、
(1層目の平面図の本数)×1層分+(2・3層目の平面図の本数)×2層分
です。
また、先行手すりの数量を正面図より求めましょう。今回は裏面にも先行手すりがあるので2倍してください。
先行手すり | NDX12 | 6×2=12個 |
先行手すり | NDX18 | 4×2=8個 |
根がらみ部と足場部の合計
根がらみ部分と足場部分で計上した数量を合計します。足場部分で数えた数量は、足場の段数と掛け算するのを忘れないでください。
品名 | 品番 | 個数 |
---|---|---|
つなぎ材 | NDT09 | 52 (=4+12×4) |
つなぎ材 | NDT12 | 402 (=58+86×4) |
つなぎ材 | NDT18 | 208 (=16+48×4) |
先行手すり | NDX12 | 48 (=12×4) |
先行手すり | NDX18 | 32 (=8×4) |
【水平材】布板・幅木・隙間ふさぎ
布板・幅木は、平面図より数えることができます。布板の隙間が赤囲い部分に発生しているので、隙間塞ぎ板も必要です。600mmの隙間塞ぎ板を1箇所あたり2枚使用します。また、今回の足場は4段あるので、平面図より拾った数を4倍してください。
品名 | 品番 | 個数 |
---|---|---|
アップロック式鋼製布板 | NDN3 | 16 (=4×4) |
アップロック式鋼製布板 | NDN4 | 128 (=32×4) |
アップロック式鋼製布板 | NDN6 | 64 (=16×4) |
兼用幅木ND・MN | MDNFG09SW | 16 (=4×4) |
兼用幅木ND・MN | MDNFG12SW | 128 (=32×4) |
兼用幅木ND・MN | MDNFG18SW | 64 (=16×4) |
隙間塞ぎ板 | NDSF06 | 32 (=2×4×4) |
安衛則563条にて、布材間の隙間は3cm以下と決められています。
【階段】階段枠・手すりなど
ダーウィン足場では、階段枠とセットで手すりなどが必要です。また図の赤丸部のように、階段が1つ増えると布板と幅木が1つずつ減るのも忘れないでください。階段枠1つあたりの資材の増減数を以下にまとめました。
品名 | 階段1つあたりの増減数 | 備考 |
---|---|---|
ND1800専用階段手すり | +2 | 外側の支柱に設置 |
階段開口部手すり | +1 | 階段枠の内側に設置 |
階段開口部幅木 | +1 | 昇降時の後方側に設置 |
アップロック式鋼製布板(NDN6) | −1 | 階段の上段側を撤去 |
兼用幅木ND・MN(MDNFG12SW) | +1 | 階段開口部手すりに設置 |
兼用幅木ND・MN(MDNFG18SW) | −1 | 階段の上段側を撤去 |
そして、正面図や側面図から階段の数量を数えましょう。今回は、正面と背面にそれぞれ3つずつ、計6個の階段を設置します。よって、先ほどまとめた増減数を6倍してください。
品名 | 品番 | 個数 |
---|---|---|
アルミ階段枠SW用 | AL3055SW | 6 |
ND1800専用階段手すり | NDKT | 12 |
階段開口部手すり | SG918SW | 6 |
階段開口部幅木 | NFG918 | 6 |
アップロック式鋼製布板 | NDN6 | -6 |
兼用幅木ND・MN | MDNFG12SW | 6 |
兼用幅木ND・MN | MDNFG18SW | -6 |
【その他】壁つなぎ・ブラケットなど
最後に、壁つなぎやブラケットなどの資材を正面図や側面図から数えます。ダーウィン足場を組む際によく使用する資材は以下の通りです。
品名 | 品番 | 個数 | 用途 |
---|---|---|---|
伸縮ブラケットND | NDBK4766C | 28 | ブラケット足場 |
C付伸縮ブラケットフリー | TWL500F | 4 | 同上 |
C付伸縮ブラケットフリー | TWL1000F | 8 | 同上 |
壁つなぎ | KS400 | 4 | 水平荷重支持 |
壁つなぎ | KS700 | 12 | 同上 |
壁つなぎ | KS1000 | 4 | 同上 |
鋼製軽量足場板 | NB400 | 20 | ブラケット足場 |
杉足場板 | S3520 | 20 | 開口部ふさぎ |
兼用自在クランプ | ARC2 | 40 | 単管パイプ固定など |
兼用直交クランプ | ARC1 | 20 | 同上 |
単管パイプ | 1.0M | 20 | パイプステップなど |
単管パイプ | 1.5M | 20 | 開口部ふさぎなど |
パイプステップ | SS1 | 10 | 乗り入れステップ |
水平養生ネット15mm目 | 1×6 | 16 | 落下防止 |
垂直養生ネット15mm目 | 6×6 | 16 | 同上 |
今回の図面には書けなかったので、個数はおおよその数字です。
足場の規模から必要な個数を予想したものなので、ご注意ください。
また壁つなぎを注文する際は、同数のグリップアンカーを準備することを忘れないでください。グリップアンカーの代わりに既設構造物のPコン穴を利用することもあります。
足場材発注表の作成
各手順で拾い上げた資材数量を合計して、発注表を作成します。発注表を作成する際の、チェックポイントは以下の通りです。
- 品番は正しいか
- 適度に割り増しできているか
- 製品重量は合っているか
- 資材の総重量は何tか
まずは、カタログの品番を正しく記載しているか確認しましょう。品番を間違えてしまうと、せっかくの数量拾い作業が台無しです。資材の寸法は、基本的に品番の数字で管理されています。寸法を示す数字に誤りがないかどうか、必ず確かめてください。
次に、拾いあげた数量を適度に割り増ししてください。搬入された資材に不備があったり、資材が足りなかったりする場合に対応したいからです。無理して注文数量をギリギリにする必要はありません。少し余る程度に、割増係数をかけるようにしましょう。
最後に、各資材の単位重量と個数をかけて総重量の計算を行います。足場材を搬入するために、車を何台手配する必要があるかを判断したいからです。今回のケースでは、総重量が10t近くになりました。よって、10t車を1台と4t車を1台手配するのが妥当です。車両手配には1週間ほど要するので、なるべく早めに総重量の計算を行ってください。
以上のチェックポイントを踏まえた上で、今回作成した足場材の発注表は以下の通りです。
私は、エクセルの機能を活用して、品番や製品重量の入力を自動化しています。
おかげで毎回カタログを見て探す手間がなくなり、ミスする可能性を減らすことができました。
足場材の重量計算を自動化する方法は、以下の記事で解説しています。Excelシートのダウンロードも可能です。
足場材の数量拾いはルールを守ってミスを防ごう
本記事では、足場材の数量拾いをミスなく行うための方法を解説しました。足場材の数量拾いのコツは、ズバリこちらです。
あらかじめ自分で決めた数量拾いの順番を守ること
ダーウィン足場の数量拾いを行う場合の、おすすめのフローは以下の通りです。
- 【鉛直材】ジャッキベース・杉敷角
- 【鉛直材】支柱
- 【水平材】つなぎ材・先行手すり
- 【水平材】布板・幅木・隙間ふさぎ
- 【階段】階段枠・手すりなど
- 【その他】ブラケット・壁つなぎなど
上記の手順に従えば、漏れなくダブりなく足場材の数量を拾うことができます。
私は、初めての足場材注文に戸惑いながら、手探りで数量拾いを行った経験があります。資材が足りなくて工程を遅らせたり、逆に余らせすぎてリース料を無駄にしたり、何度も何度もミスをしました。失敗を積み重ねた結果生み出した、私なりの数量拾いフローを本記事でまとめています。紹介した数量拾い方法を参考にすれば、足場材の注文を滞りなく行うことができます。ぜひ、本記事の内容を参考に足場材の発注業務を進めてください。