- 伐採工の担当になったんだけど…
- 未経験だから何をすれば良いか分からない
- 伐採工の施工管理業務を具体的に教えて!
橋梁やダム、トンネルが作られる場所には、もともと草木が生い茂っている場合が多いです。工事を進めるために、まず初めに伐採工を行う必要があります。伐採工は本設工事ではないので、若手現場監督が担当者を任されることも。未経験の工事にどうすれば良いのか分からず戸惑っている人も多いはずです。
私がゼネコンに入社して、初めて主担当を任されたのが伐採工でした。橋梁上部工を施工する前に、工事現場として使用するヤードを拡幅するのが目的です。打ち合わせや段取りの方法が分からず、何度も先輩に助けられながら施工管理を行いました。
そこでこの記事では、未経験者でも迷わずに施工管理業務ができるように、伐採工の施工手順を分かりやすく解説します。この記事を読めば、「伐採工の施工管理は何をすれば良いのか」が分かります。
私が若手現場監督として伐採工の施工管理を行った経験をまとめました。伐採工について詳しく知りたい方は最後まで読んでください。
伐採工の概要
伐採工とは、木を切り倒して造成する工事のことです。伐採工は5つの工程に分かれます。
- 刈り払い…雑草を除去する
- 伐倒…立木を切り倒す
- 集木…倒した木を集める
- 除根…根を取り除く
- 運搬…木や根を運ぶ
まずは、草刈り機で生い茂った雑草を除去します。そして、チェーンソーや重機を用いて立木を切り倒して集積。伐り倒した木の根は、重機によって掘り起こします。最後に、深ダンプなどの車両に木と根を積み込んで、搬出を行います。
伐採工の工程管理について
伐採工の工程管理では、主に以下の6つを行います。
- 伐採範囲の確認
- 施工業者との打ち合わせ
- 作業手順書の作成
- 資機材の手配
- 搬出車両の手配
- 作業中の現場巡視
伐採範囲の確認
まず初めに、伐採する範囲を確認します。図面と現場を照らし合わせながら、どの木を切り倒す必要があるのか、除草が必要な場所はどこかを把握しましょう。私が伐採範囲を確認する際は、以下の段取りを行いました。
- ヤード造成用の図面を確認
- 境界線を鉄ピンとピンクリボンで明示
- 各工事担当者に除草範囲の確認
- 伐採、除根する木の本数を計上
私の場合は、ヤード造成のための伐採工を担当したので、ヤードとして使用する範囲を示した図面がありました。その図面を見ながら、ヤードの境界線を鉄ピンとピンクリボンで明示しました。仮設工事なので、ミリ単位で境界線の位置だしをする必要はありません。コンベックスを用いて、おおまかに計測を実施します。
また、各工事担当者に通路として使用したい場所や、現況を留めたい場所はどこかを確認しました。その上で刈り払いする範囲をあらかじめ決めておくことが大切です。
現場にて境界線の明示と刈り払い範囲の決定が終われば、伐採、除根する木の本数を数えます。木の位置を図面に書き出しておくことで、業者との打ち合わせや見積もりに役立てることができます。
私は見積もりには関わっていません。
しかし、伐採業者と契約する際に上司から「何本切るのか?」と聞かれました。質問で慌てないように準備しておきましょう。
施工業者との打ち合わせ
伐採範囲の確認後、施工業者に連絡を取って現場で打ち合わせを行います。伐採したい木はどれか、刈り払いを行うのはどこかを、現場で図面を見せながら説明しましょう。施工業者の方は、現場で実際の条件を見ながら以下の事項を検討してくれます。
- 人員について
- 作業日数について
- 必要な機械について
- 作業手順について
これらの検討事項については、あらかじめこちらから前提条件を伝える必要があります。例えば、「◯日の△時までに終わらせてほしい。」「××の範囲は真っ先に刈り払いと伐採を終えてほしい。」などです。前提条件を踏まえて、適切な機械・人員・工程で作業できるように調整してもらいましょう。
こちらの条件を一方的に押し付けてはいけません。
話し合いながら、双方にメリットのある工程を組むことが大切です。
作業手順書の作成
施工業者との打ち合わせの内容をもとに、作業手順書を作成します。作業手順書には、以下の事項を記載するのが一般的です。
- 施工順序について
- 予想される災害について
- 災害防止対策について
- 使用資機材について
- 必要資格について
施工順序は具体的に示しましょう。たとえば機械伐倒作業の場合は下記のステップに分かれます。
- 準備
- 重機で伐倒木を掴む
- 伐倒
- 枝葉折り
- 玉切り
- 集積
- 積込
そして、各作業に対して災害の予想と防止対策を記入。また、施工にあたって使う資機材は何か、どんな資格を持っている人が作業を行うのかも合わせて書きます。
各会社ごとに作業手順書のフォーマットは用意されているはずです。
記載が必要な事項を確認した上で、打ち合わせするとスムーズに作業手順書を作成できます。
資機材の手配
作業手順書に記載した使用資機材の手配を行います。伐採、刈り払い作業に必要な資機材は下記のとおりです。
- フェラーバンチャ
- チェーンソー
- 楔
- ハンマー
- 草刈機
- アメリカンレーキ
- 一輪車
- 保護ズボン
- 保護メガネ
- フェイスガード
- 耳栓
- 振動手袋
- スネ当て
フェラーバンチャは、伐倒作業に使用する重機です。バックホウのバケット部分に特殊なアタッチメントを使用しています。どんな重機か気になる方は、下記の動画を見てください。
楔とハンマーは、フェラーバンチャのみで伐倒が難しい時に使用します。フェラーバンチャで伐倒木をつかんだ後、チェーンソーで木の幹に受け口を作り、ハンマーで楔を打ち込んで木を倒します。
アメリカンレーキは刈り払った草を集めるのに使用します。アメリカンレーキで集草した後は、一輪車に草を積み込んで運搬します。
伐採業者が自前で全て用意している場合もあります。
フェラーバンチャで木を伐倒している様子は圧巻でした。
搬出車両の手配
伐採して玉切りと集積を終えた木は、車両で搬出する必要があります。搬出方法としては、下記の2つが挙げられます。
- 重機で車両に直接積み込む
- コンテナを用意して後日搬出
前者は、伐採してすぐに木を搬出できるので次の作業に移りやすい反面、車両の時間を綿密に調整する必要があります。後者は、作業が落ち着いたタイミングで搬出できるというメリットはありますが、しばらくコンテナを現場に残置する必要があります。私は、伐採後すぐに盛土作業を行う必要があったので前者を選択しました。
私が手配した搬出車両は、10tの深ダンプです。通常のダンプでは、大きい木や根はほとんど積み込むことができません。条件に応じて適切な車両を手配しましょう。
搬出車両については、施工業者が用意してくれる場合と元請けが別業者と契約する場合があります。
通常の産廃処理はできないので、上司に搬出方法を確認してください。
作業中の現場巡視
全ての段取りが終わればいよいよ本施工です。ですが、伐採作業中は特に管理することがありません。刈り払い範囲や伐採順序を作業員の方に確認されることがあるので、現場を巡視しながら適宜対応します。私の場合は、刈り払い中に蜂の巣が見つかったので、草刈機ではなく重機での除草作業に変更しました。
伐採工の安全管理について
伐採工の安全管理では、主に以下の3つを行います。
- 伐採範囲の立入禁止措置
- 重機作業時の立入禁止または誘導者の配置
- 保護具着用の徹底
伐採範囲の立入禁止措置
伐採範囲には、立入禁止措置を行いましょう。伐木が作業員の方に激突する可能性があるからです。実際に、伐採作業範囲に人が侵入したことに気づかず伐倒し、伐木の下敷きになったという死亡事故が過去に何件かあります。具体的な立入禁止措置は、以下の方法が挙げられます。
- カラーコーン・コーンバーによる明示
- 「伐倒作業中・立入禁止」などの注意喚起看板の設置
- 電子サイレンなどによる倒木合図
伐採範囲に立ち入る際に作業を一旦やめることができるように、合図者を配置するのも重要です。
重機作業時の立入禁止または誘導者の配置
フェラーバンチャは、車両系建設機械に該当します。よって、フェラーバンチャで作業する際は、安衛則158条と159条により、立入禁止または誘導者の配置を実施する必要があります。
(接触の防止) 第百五十八条 事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、運転中の車両系建設機械に接触 することにより労働者に危険が生ずるおそれのある箇所に、労働者を立ち入らせてはならない。ただし、 誘導者を配置し、その者に当該車両系建設機械を誘導させるときは、この限りではない。 2 前項の車両系建設機械の運転者は、同項ただし書の誘導者が行なう誘導に従わなければならない。 (合図) 第百五十九条 事業者は、車両系建設機械の運転について誘導者を置くときは、一定の合図を定め、誘導 者に当該合図を行なわせなければならない。 2 前項の車両系建設機械の運転者は、同項の合図に従わなければならない。労働安全衛生規則 第二編 第二章 建設機械等(第百五十一条の百七十五-第二百三十六条)
保護具着用の徹底
伐採はチェーンソー、刈り払いは草刈機といった刃物を使用した機械を使用します。必ず保護具を着用するように徹底しましょう。機械がキックバックして、刃先で身体を切る恐れがあるからです。基本的には、作業員の方が保護具を持参すると思います。しかし、持っていない場合や忘れ物をする場合もあるので、元請けで保護具を1セット用意しておくと安心です。
実際に、スネ当てを忘れた方に貸すことがありました。
伐採工の施工管理まとめ
本記事では、伐採工の施工管理について徹底解説しました。工程管理と安全管理の項目を再度まとめます。
- 伐採範囲の確認
- 施工業者との打ち合わせ
- 作業手順書の作成
- 資機材の手配
- 搬出車両の手配
- 作業中の現場巡視
- 伐採範囲の立入禁止措置
- 重機作業時の立入禁止または誘導者の配置
- 保護具着用の徹底
私は、未経験の工事に戸惑いながら手探りで施工管理を行いました。その時に重要であると感じたポイントをまとめています。上記の管理項目をおさえておけば、伐採工の施工管理は滞りなく行うことができるはずです。ぜひ、本記事の内容を参考に伐採工の施工管理業務を進めてください。