- 仮桟橋工の担当になったんだけど…
- 未経験だから何をすれば良いか分からない
- 仮桟橋工の施工管理業務を具体的に教えて!
山や河川での構造物施工を行う際に実施される仮桟橋工。メインの工事を行う前に架設して、メイン工事の施工が完了したら撤去する仮設の橋です。入社してすぐに仮桟橋工の担当者を任されて、悩んでいる若手現場監督も多いはず。
私自身、新卒でゼネコンに入社して半年くらい経った時に、仮桟橋工の施工を実施しました。担当者をしている先輩から、どんな資機材を手配するのか、現場で何を管理するのかを、教えてもらった経験があります。
そこでこの記事では、未経験者でも迷わずに施工管理業務ができるように、仮桟橋工の施工手順を分かりやすく解説します。この記事を読めば、「仮桟橋工の施工管理は何をすれば良いのか」が分かります。
私が若手現場監督として仮桟橋工の施工管理を行った経験をまとめました。仮桟橋工について詳しく知りたい方は最後まで読んでください。
仮桟橋工の概要
仮桟橋は、支持杭としてH型鋼などを用いて、床版として覆工板を敷いた形が一般的な仮設構造物です。仮設構造物の計画と施工では、下記のように説明されています。
仮桟橋は、工事用車両や建設機械などの通行や作業に供する工事専用の仮橋、および土留め開削工法や法切り開削工法において、掘削内部に設ける交通路や工事用作業足場に供する仮設桟橋の総称である。
〜中略〜
また、仮桟橋は土留め、仮締切り内の中間杭または単独の支持杭を用いていることから、掘削段階とともに生じる支持力の低下や杭の座屈の問題、桟橋上を動く荷重(特に水平荷重)による桟橋の変位が切梁へ与える有害な影響などに留意する必要がある。
仮設構造物の計画と施工【2010年改訂版】 土木学会
私の現場では、橋梁施工のために、河川が流れている場所をヤードとして拡幅する必要があったので、河川敷に仮桟橋工を実施しました。
バイブロハンマーとウォータージェットを併用して支持杭を打ち込みました。大型クレーンで支持杭を打ち込んでいる様子は圧巻です。
仮桟橋工の工程管理について
仮桟橋工の工程管理では、主に以下の8つを行います。
- 仮桟橋架設範囲の確認
- 施工業者との打ち合わせ
- 作業手順書の作成
- 支持杭打ち込み箇所の位置だし
- 仮桟橋部材の車両手配
- 機材の手配
- 支持杭のマーキング
- ヤードの整備
仮桟橋架設範囲の確認
まず初めに、仮桟橋を架設する範囲を現場で確認します。仮桟橋は仮設構造物とはいえ、本施工のために必要不可欠な場合が多いです。その場合は、設計の段階で本設の構造物と合わせて仮桟橋の図面も作成されています。図面を見ながら、現場のどの範囲に仮桟橋を架設するのかを確認しましょう。
最初の確認をする時は、厳密な測量は必要ありません。
打ち合わせ前に現場状況を把握するのが目的だからです。
巻き尺やコンベックスを用いて、おおよその範囲を確認します。
施工業者との打ち合わせ
仮桟橋架設範囲の確認後、施工業者と現場で打ち合わせを行います。現場で図面を見せながら、どの順番で施工を行うのかを説明しましょう。施工業者の方は、現場で実際の条件を見ながら以下の事項を検討してくれます。
- 人員について
- 作業日数について
- 必要な機械について
- 作業手順について
これらの検討事項については、あらかじめこちらから前提条件を伝える必要があります。例えば、「◯日までに終わらせてほしい。」「×日から他業者の施工が始まるので、△の場所は使えなくなる」などです。前提条件を踏まえて、適切な人員・工程・機械で作業できるように調整してもらいましょう。
仮桟橋工は、大型の重機や部材を使用するので、ヤードを使用する範囲が広いです。なるべく早めに、他業者の施工との調整を行いましょう。
直前に伝えて怒られている同僚を見たことがあります。
作業手順書の作成
施工業者との打ち合わせの内容をもとに、作業手順書を作成します。作業手順書には、以下の事項を記載するのが一般的です。
- 施工順序について
- 予想される災害について
- 災害防止対策について
- 使用資機材について
- 必要資格について
施工順序は具体的に示しましょう。盛土作業の場合は下記のステップに分かれます。
- 作業用の大型クレーン組立
- 導杭・導枠設置
- 支持杭打ち込み
- 下部工材の取付
- 支持杭切断による杭頭高調整
- トッププレート溶接
- 受桁設置
- 主桁設置
- 上部工材設置
- 覆工板設置
- 手すりの取付
そして、各作業に対して災害の予想と防止対策を記入。また、施工にあたって使う資機材は何か、どんな資格を持っている人が作業を行うのかも合わせて書きます。
大型クレーンで重量物を吊る作業が頻繁に行われます。吊り荷の落下や、クレーン旋回時の作業員との衝突などが災害として予想されます。
支持杭打ち込み箇所の位置だし
実際に施工を始める前に、支持杭の打ち込み位置を現場で位置だしします。もちろん支持杭は地面に打ち込むので、墨を打てる場所ではありません。木杭を打ち込んで位置を明示しましょう。支持杭打ち込み時は、木杭を引き抜くことになるので、あらかじめ控えの木杭も用意するのがおすすめです。
支持杭の本数分、木杭を打ち込む必要があるので、かなり時間がかかります。支持杭が50本ほどあった私の現場では、測量屋さんに依頼して2日ほどかかりました。
仮桟橋部材の車両手配
施工業者との打ち合わせ時、おおよその工程が決まります。その工程に合わせて、仮桟橋部材の車両を手配しましょう。仮桟橋は橋脚ごとのサイクル施工になるので、必要な部材もそのサイクルに合わせる必要があります。搬入部材のサイクルは下記のとおりです。
- 支持杭
- 下部工材
- 受桁
- 主桁
- 上部工材
- 覆工板
もちろん施工のペースにはよりますが、基本的に毎日何かしらの搬入を行うことになるはずです。工程に間に合うように、滞りなく部材を搬入しましょう。
仮桟橋の部材は、スペースを多くとるのでただ闇雲に搬入してはいけません。もちろん工程から遅れてはいけませんが、早く入れすぎても現場が混雑するので注意が必要です。
施工業者の方とこまめに打ち合わせながら部材を搬入しましょう。
機材の手配
作業手順書に記載した機材の手配を行います。仮桟橋工で必要な機材は下記の通りです。
- ラフタークレーン
- クローラークレーン
- 溶接機
- バイブロハンマー
- ウォータージェット
- 発電機
ラフタークレーン
一つの運転席でクレーン操作と走行が可能な自走式クレーンです。仮桟橋の部材を搬入車両から荷下ろしする際に使用します。仮桟橋の部材は重量物が多いので、比較的大きいラフタークレーンを用いることで作業半径を確保します。
クローラークレーン
クローラークレーンは、タイヤではなくキャタピラを備えているのが特徴の移動式クレーンです。自走可能ですが、走行速度が遅いので一般道を走行することはできません。車両に積み込んで現場に搬入する必要があります。支持杭の打ち込みや、その他部材を架設する際に使用します。
私が仮桟橋工で使用したのは、200tラフタークレーンでした。分解した状態で搬入し、現場で組み立ててから使用しました。
溶接機
支持杭を切断した後、トッププレートを溶接する際に使用します。屋外で溶接を行うため、エンジンタイプの溶接機を用いるのが一般的です。
バイブロハンマー
支持杭を打ち込む際に、クローラークレーンに取り付けて使用する機械です。バイブロハンマーで杭や鋼矢板に強制振動を伝達します。それにより、先端の抵抗及び摩擦抵抗を急速かつ一時的に低減させ、打ち込みや引き抜きを行います。
ウォータージェット
高圧水を噴射する機械です。バイブロハンマーと組み合わせることで、硬質な地盤にも杭を打ち込むことができます。水槽からくみ上げられた水をウォータージェットカッタにより高圧力水に変換。その後、高圧ホース及び導水パイプを通り、支持杭の先端ノズルから噴射されます。
発電機
エンジン溶接機、バイブロハンマー、ウォータージェットを使用するために、発電機を用意する必要があります。どの機械も電力を多く消費するので、容量の大きい発電機を手配しましょう。
支持杭のマーキング
支持杭を打ち込む前に、あらかじめ支持杭にマーキングをしておきます。具体的には、以下のような場所です。
- 導枠取り外し場所
- 根入れ深さ確保位置
支持杭となるH鋼をボルトで連結している場合、連結箇所が導枠内を通過できないことがあります。一度導枠を取り外す必要があるので、その位置をあらかじめ記しておきます。根入れ深さ確保位置の明示は、どこまで支持杭を打ち込むかの基準になるので必要不可欠です。
支持杭の打ち込みが終われば、どこで支持杭を切断するのかをマーキングします。その際はレベルで確認します。
ヤードの整備
仮桟橋の施工が始まったら、こまめにヤードの整備を行う必要があります。仮桟橋の架設が進むにつれて、クレーンの設置場所や部材の仮置き場所が変化するからです。その都度必要な場所を整備する必要があります。例えば、以下のような整備を行います。
- 産廃かごの移設
- 鉄板の敷設
- 沈砂池の用意
- 資機材の移動
- 安全通路の整備
沈砂池とは、水中の土砂などを沈殿させて取り除くための池です。ウォータージェットを使用して出てきた泥水を集積するために用意します。
仮桟橋工の安全管理について
仮桟橋工の安全管理では、主に以下の4つを行います。
- 支持杭の支持力確認
- 支持杭の沈下量確認
- 重機作業時の立入禁止または誘導者の配置
- クレーン則の徹底
支持杭の支持力確認
仮桟橋上で重量物を施工する際に、杭の支持力が不足して支持杭が沈下することが懸念されます。そのため、支持杭を打設する際に、動的支持力を算出します。バイブロハンマによる動的支持力算出方法は、以下の項目が必要です。
- 打設速度
- 打止時間最大電流値
上記2つの値から動的支持力を算出し、支持杭に発生する最大鉛直力よりも大きいことを確認しましょう。確認ができたら支持杭の打ち込み完了です。
支持杭の沈下量確認
支持杭の打ち込みが終了したら、打ち込み時の高さがわかるように、支持杭にマーキングを行いましょう。マーキング位置が下がっていないかを、適宜レベルを用いて確認することで、沈下量を管理します。
実際に支持杭が沈下して仮桟橋が崩壊した事例があるようです。
二度と発生しないように管理を徹底する必要があります。
重機作業時の立入禁止または誘導者の配置
クレーンは、車両系建設機械に該当します。作業をする際は、安衛則158条と159条により、立入禁止または誘導者の配置を実施する必要があります。
(接触の防止) 第百五十八条 事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、運転中の車両系建設機械に接触 することにより労働者に危険が生ずるおそれのある箇所に、労働者を立ち入らせてはならない。ただし、 誘導者を配置し、その者に当該車両系建設機械を誘導させるときは、この限りではない。 2 前項の車両系建設機械の運転者は、同項ただし書の誘導者が行なう誘導に従わなければならない。 (合図) 第百五十九条 事業者は、車両系建設機械の運転について誘導者を置くときは、一定の合図を定め、誘導 者に当該合図を行なわせなければならない。 2 前項の車両系建設機械の運転者は、同項の合図に従わなければならない。労働安全衛生規則 第二編 第二章 建設機械等(第百五十一条の百七十五-第二百三十六条)
具体的な立入禁止措置は、以下の方法が挙げられます。
- カラーコーン・コーンバーによる明示
- 「重機作業中・立入禁止」などの注意喚起看板の設置
クレーン則の徹底
クレーンを使用する際は、クレーン則によって定められた事項を守って作業を行う必要があります。仮桟橋部材の吊り上げ作業やバイブロハンマー使用作業で特に注意すべきクレーン則を以下に列挙します。
- 吊り荷の下への立入禁止(29条)
- アウトリガの張出し、ロックピンのセット(70条)
- 合図者の指名(71条)
- クレーン旋回範囲への立入禁止(74条)
- 玉掛け用ワイヤロープの管理(213条など)
特にバイブロハンマーを使用する際は、注意が必要です。
万が一転倒した場合に備えて、作業員の退避位置を明確にしておきましょう。
仮桟橋工の施工管理まとめ
本記事では、仮桟橋工の施工管理について徹底解説しました。工程管理、安全管理の各項目を再度まとめます。
- 仮桟橋架設範囲の確認
- 施工業者との打ち合わせ
- 作業手順書の作成
- 支持杭打ち込み箇所の位置だし
- 仮桟橋部材の車両手配
- 機材の手配
- 支持杭のマーキング
- ヤードの整備
- 支持杭の支持力確認
- 支持杭の沈下量確認
- 重機作業時の立入禁止または誘導者の配置
- クレーン則の徹底
私は、仮桟橋工で何を施工管理するのか分からず、担当者をしている先輩から教えてもらった経験があります。その時に重要であると感じたポイントをまとめました。上記の管理項目をおさえておけば、仮桟橋工の施工管理は滞りなく行うことができます。ぜひ、本記事の内容を参考に仮桟橋工の施工管理業務を進めてください。