- 大型土のう工の担当になったんだけど…
- 未経験だから何をすれば良いか分からない
- 大型土のう工の施工管理業務を具体的に教えて!
災害復旧工事や河川工事の仮設工で頻繁に実施される大型土のう工。大型土のう袋に砂や石を詰めて、積み重ねる工事です。入社してすぐに大型どのう工の担当者を任されて、悩んでいる若手現場監督も多いはず。
私自身、新卒でゼネコンに入社して半年くらい経った時に、ヤード拡幅のための大型土のう工の施工管理を担当しました。資機材の手配や現場で何を管理して良いのかが分からず、手探り状態で施工管理を行いました。
そこでこの記事では、未経験者でも迷わずに施工管理業務ができるように、大型土のう工の施工手順を分かりやすく解説します。この記事を読めば、「大型土のう工の施工管理は何をすれば良いのか」が分かります。
私が若手現場監督として大型土のう工の施工管理を行った経験をまとめました。大型土のう工について詳しく知りたい方は最後まで読んでください。
大型土のう工の概要
大型土のう工は、石や砂を詰めた大型土のう袋を積み上げる工事のことです。施工性に優れているので、短期間に施工や撤去をする必要がある仮設工で採用されます。例えば、下記のような目的で大型土のう工を行います。
- 土留め
- 護岸
- 仮締切
- ヤード拡幅
私の現場では、橋梁施工のために、河川が流れている場所をヤードとして拡幅する必要があったので、河川敷の法面に大型土のう工を実施しました。大型土のう工は、以下の4つの工程に分かれます。
- 土砂荷下ろし…土砂を現場に搬入
- 大型土のう作成…土のう袋に土砂を詰める
- 大型土のう運搬…作成した大型土のうを移動する
- 大型土のう設置…重機で設置箇所に置く
土留めや護岸、仮締切が目的の場合は、上記の工程で終わりです。
大型土のう上に資材を置いたり重機を設置したりする場合は、砕石や鉄板を大型土のう上に敷設して水平に仕上げます。
大型土のう工の工程管理について
大型土のう工の工程管理では、主に以下の8つを行います。
- 大型土のう設置範囲の計画
- 現地測量
- 大型土のう製作数の計算
- 施工業者との打ち合わせ
- 作業手順書の作成
- 大型土のう材料の注文
- 資機材の手配
- 搬入車両の受け入れ
大型土のう設置範囲の計画
まず初めに、大型土のうを設置する範囲を計画します。土留めや護岸、仮締切などの各目的に応じて、大型土のうをどの範囲に置くのか検討しましょう。計画時は、必ず下記のポイントをおさえる必要があります。
今後の施工を過不足なく考慮できているか
例えば私の現場では、橋梁施工用の移動作業車を組み立てるスペースを造るために、大型土のう工を実施しました。その際、移動作業車の解体状況まで検討しました。組み立てと解体で、必要なヤードの大きさが違ったからです。必ず工事全体を見据えた計画を立てるように心がけましょう。
現地測量
現場で測量を実施して、大型土のう設置範囲の確認を行います。確認するポイントは、次の2点です。
- 計画した範囲に障害物はないか
- 河床や地盤から目標の高さまでは何mか
大型土のうを設置する場所は、整備されていないことが多いです。木々が生えていたり、川の中に入っていたりする場合があります。測量によって、計画した範囲に障害物があることが判明した場合は、撤去方法を計画したり、そもそもの設置範囲を見直したりしましょう。
また、河床や地盤の高さを求める必要があります。地盤に大型土のうを設置する場合は、水準測量で地盤高を求めるだけで十分です。しかし、河床の場合は水準測量で求めることができません。河川測量の専門家に依頼しましょう。
河川に大型土のうを設置する作業は、潜水士さんにお願いします。
その潜水士さんが、「測量も自分たちに任せてもらった方が施工しやすい。」とおっしゃっていました。
潜水作業と同じ業者に測量を依頼すると、施工がスムーズに進みます。
大型土のう製作数の計算
現地測量を終えたら、大型土のう製作数の計算を行います。大型土のうの体積は、横1m・縦1m・高さ1mの1m3です。設置範囲の面積と、地盤から目標までの高さをもとに、大型土のうが何袋必要かを計算します。しかし、単純に積み上げたい範囲の体積を求めれば良いわけではありません。写真のように、必ず勾配をつけて大型土のうを積み重ねる必要があるからです。一般的には、1:0.5よりも緩い勾配をつけます。
空間的にイメージをして計算する必要があります。
最初は2次元の図面から必要な大型土のう袋数を計算するのが難しくて苦労しました。
施工業者との打ち合わせ
大型土のうの製作袋数の計算が終われば、施工業者と現場で打ち合わせを行います。どこで大型土のうを作成して、どの順番で大型土のうを積み上げるのか、現場で図面を見せながら説明しましょう。施工業者の方は、現場で実際の条件を見ながら以下の事項を検討してくれます。
- 人員について
- 作業日数について
- 必要な機械について
- 作業手順について
これらの検討事項については、あらかじめこちらから前提条件を伝える必要があります。例えば、「◯日の△時までに終わらせてほしい。」「大型土のう作成はこの場所を使用してほしい。」などです。前提条件を踏まえて、適切な人員・工程・機械で作業できるように調整してもらいましょう。
工程や使用する重機に関しては、打ち合わせ前にあらかじめ計画しておくと、話がスムーズに進みます。
作業手順書の作成
施工業者との打ち合わせの内容をもとに、作業手順書を作成します。作業手順書には、以下の事項を記載するのが一般的です。
- 施工順序について
- 予想される災害について
- 災害防止対策について
- 使用資機材について
- 必要資格について
施工順序は具体的に示しましょう。大型土のう工の場合は下記のステップに分かれます。
- 土砂搬入荷下ろし
- 大型土のう作成
- 大型土のう運搬
- 大型土のう設置
そして、各作業に対して災害の予想と防止対策を記入。また、施工にあたって使う資機材は何か、どんな資格を持っている人が作業を行うのかも合わせて書きます。
大型土のう工は、バックホウやクレーンなどの重機を使用する作業が多いです。
重機と作業員の接触が予想されます。
大型土のう材料の注文
次に、大型土のう材料の注文を行います。具体的には、以下の2つです。
- 耐候性大型土のう袋
- 土砂
耐候性大型土のう袋は、1袋あたり約2tの耐荷重があります。また、屋外での使用期間は1年〜3年です。通常の1トンパックよりも、耐荷重が大きく、耐久性に優れています。大型土のう工を実施する場合は、必ず耐候性大型土のう袋を使用します。計画の精度にもよりますが、計算で求めた大型土のう袋数の1〜2割増で注文しておくと安心です。
大型土のう袋に詰める土砂も必要です。大型土のう袋に入る量が1m3なので、耐候性大型土のう袋の数と同じ体積分注文します。その際は、搬入車両の台数についても言及しましょう。何台で何回転して土砂を運ぶかによって、1日の搬入土砂量が変わるからです。1日あたりの搬入土砂量から逆算して、ダンプが何台必要なのかを必ず伝えてください。
大型土のう上を水平に仕上げる場合は、砕石や鉄板も用意します。
どちらも設置面積を計算した上で注文しましょう。
資機材の手配
作業手順書に記載した資機材の手配を行います。私が担当した大型どのう工で実際に手配した資機材は下記の通りです。
- 大型土のう製作治具
- バックホウ
- クレーン
大型土のう製作治具
大型土のう製作工では、上記の動画で紹介されている「瞬作」を使用するのが一般的です。「瞬作」には下記の特徴があります。
- 2人で3分以内で1個の大型土のう製作が可能
- 1日150個以上製作可能(従来工法では1日50個程度)
- 大型土のうを楽に外せる治具を採用
バックホウ
クレーン仕様のバックホウを用いて、大型土のうの製作を行います。バックホウの作業手順は以下の通りです。
- 瞬作を吊り上げて大型土のう袋をセットする
- 瞬作に土砂を詰め込む
- 瞬作を吊り上げて土砂を中詰めする
- 瞬作と大型土のう袋を仮置き場に移動する
- 大型土のう袋を治具から取り外した後、大型どのう製作場所に瞬作を移動する
クレーン
製作した大型土のうを仮置き場から持ち上げて、目的の場所に設置するために使用します。大型土のうの重さは、1つあたりおよそ1.7tです。仮置き場から本設の場所まで運ぶのに必要な作業半径を検討した上で、クレーンの規格を検討しましょう。
搬入車両の受け入れ
全ての段取りが終われば、いよいよ大型土のう工を実施します。大型土のう工の作業中は、主に搬入車両の受け入れを行います。大型土のう製作場所に土砂を荷下ろしできるように車両を誘導します。大型土のうの製作ペースを見ながら、翌日以降の搬入車両の台数を検討するのも重要です。
土砂の搬入よりも、大型土のうを製作するペースの方が早い場合、作業が止まってしまいます。
大型土のう工の写真管理について
大型土のう工の写真管理では、大型土のうの製作数を把握できる写真を撮影します。数量計算書であらかじめ見積られていた袋数と比較するためです。場合によっては設計変更の対象になることもあります。工事担当者は、具体的に以下の業務を行います。
- 大型土のう袋に数字をマーキング
- 数量が分かるように写真撮影
大型土のう袋に数字をマーキング
完成した大型土のう袋に数字をマーキングしていきます。ラッカースプレーを使用するのが一般的です。
瞬作を使用すると、3分で1袋のペースで大型土のうが完成します。
うっかりマーキングを忘れると、すぐに溜まってしまうので注意が必要です。
数量が分かるように写真撮影
ある程度の個数の大型土のうが完成して、マーキングも終えたら、写真を撮影します。何袋製作したのかが分かるように、全数が見えるような角度で撮影しましょう。きちんと大型土のうを製作した証明になるので、非常に重要な仕事です。
仮置き場で撮影するのか、本設の場所で撮影するのか、統一することをおすすめします。仮置き場で撮影する場合、うっかり写真を忘れて既に設置済にならないよう注意しましょう。
大型土のう工の安全管理について
大型土のう工の安全管理では、主に以下の4つを行います。
- 過積載の確認
- 重機作業時の立入禁止または誘導者の配置
- クレーン機能付バックホウ作業時の資格確認
- クレーン則の徹底
過積載の確認
大型土のうに詰める土砂を搬入するダンプカーが過積載していないかを適宜確認しましょう。ダンプカーには、計量装置が搭載しているのが一般的です。メーターの値が、最大積載荷重を超えていないかどうかを確かめます。場合によっては、発注者から過積載確認の有無を質問される場合があります。確認状況の写真を撮影しておくと安心です。写真管理の際は、必ず下記の項目が写るように撮影しましょう。
- 伝票
- 車のナンバープレート
- メーターの値
重機作業時の立入禁止または誘導者の配置
バックホウやクレーンは、車両系建設機械に該当します。作業をする際は、安衛則158条と159条により、立入禁止または誘導者の配置を実施する必要があります。
(接触の防止) 第百五十八条 事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、運転中の車両系建設機械に接触 することにより労働者に危険が生ずるおそれのある箇所に、労働者を立ち入らせてはならない。ただし、 誘導者を配置し、その者に当該車両系建設機械を誘導させるときは、この限りではない。 2 前項の車両系建設機械の運転者は、同項ただし書の誘導者が行なう誘導に従わなければならない。 (合図) 第百五十九条 事業者は、車両系建設機械の運転について誘導者を置くときは、一定の合図を定め、誘導 者に当該合図を行なわせなければならない。 2 前項の車両系建設機械の運転者は、同項の合図に従わなければならない。労働安全衛生規則 第二編 第二章 建設機械等(第百五十一条の百七十五-第二百三十六条)
具体的な立入禁止措置は、以下の方法が挙げられます。
- カラーコーン・コーンバーによる明示
- 「重機作業中・立入禁止」などの注意喚起看板の設置
クレーン機能付バックホウ作業時の資格確認
クレーン機能を備えた車両系建設機械は、3t未満の移動式クレーンとして取り扱われます。以下の事項を守って、大型土のう製作を行っているか、確認してください。
- 特定自主検査と移動敷きクレーンの定期自主検査の両方が必要
- 「小型移動式クレーン運転技能講習」の修了が必要(移動式クレーン運転士免許でも可)
- 「車両系建設機械(整地・運搬・積込み及び掘削用)運転技能講習」の修了が必要
- 大型土のうは1t以上あるので、玉掛け作業は「玉掛け技能講習修了者」が必要
クレーン則の徹底
クレーンを使用する際は、クレーン則によって定められた事項を守って作業を行う必要があります。大型土のうを吊り上げる作業で特に注意すべきクレーン則を以下に列挙します。
- 吊り荷の下への立入禁止(29条)
- アウトリガの張出し、ロックピンのセット(70条)
- 合図者の指名(71条)
- クレーン旋回範囲への立入禁止(74条)
- 玉掛け用ワイヤロープの管理(213条など)
クレーン則だけでも覚えることはたくさんあります。
普段は何気なく行っているクレーン作業でも、法律を意識しながら観察するようにしましょう。
大型土のう工の施工管理まとめ
本記事では、大型土のう工の施工管理について徹底解説しました。工程管理、写真管理、安全管理の各項目を再度まとめます。
- 大型土のう設置範囲の計画
- 現地測量
- 大型土のう作成数の計算
- 施工業者との打ち合わせ
- 作業手順書の作成
- 大型土のう材料の注文
- 資機材の手配
- 搬入車両の受け入れ
- 大型土のう袋に数字をマーキング
- 数量が分かるように写真撮影
- 過積載の確認
- 重機作業時の立入禁止または誘導者の配置
- クレーン機能付バックホウ作業時の資格確認
- クレーン則の徹底
私は、初めての大型土のう工に戸惑いながら手探りで施工管理を行った経験があります。その際、重要であると感じたポイントをまとめました。上記の管理項目をおさえておけば、大型土のう工の施工管理は滞りなく行うことができます。ぜひ、本記事の内容を参考に大型土のう工の施工管理業務を進めてください。